商店街の個性。


 

皆さんこんにちは、バーシエールの岡本で

す。めっきり涼しくなりましたね。季節の変

わり目です。風邪などひきませぬよう、ご自

愛くださいませ。ところでわたくし、先日

台東区の谷中銀座にお邪魔しました。別段、

商店街巡りなどというイベントめいたもので

もなく、極めて恣意的に足を運んだのです。

思い浮かんだといえば、谷根千という言葉く

らい。これは谷中、根津、千駄木の頭文字か

らくる略称ですが、東京の散歩コースとして

はそれなりに名が通っていますので、耳にし

たことがある方も多いかと思います。所謂、

下町グルメを食べ歩きと言った風情になりま

すね。私、商店街の食べ歩きはとても好きで

す。普段出来ないからこそのあの開放感は童

心を喚起させてくれますし、少し行儀悪くし

た方が食べ物も美味しく感じます。まあ、も

ちろんビール片手にという大人ならではの

無作法も手伝ってくれてはいますが  笑

この日は休日とはいえ、あいにくの天気で

人も少ないのでは、と踏んでいましたが、

さすがに観光名所だけあって、狭く短い商店

街はいつのまにか人で溢れかえっていまし

た。皆一様に、揚げ物を喰らい、酒を呑み、

被写体に向けてシャッターを切っていまし

た。その最中、私は人ゴミの中でつと立ち止まり

、とある店の店名が知りたいと、庇の上の看

板に目を向けました。すると、木製の板看板

の脇に正方形の額に収まった切り絵が飾られ

ている事に気がついたのです。

これは仕事柄といいますか、切り絵を見ると

、私はある人物が必ず頭をよぎります。バー

に精通する人間なら一度は耳にしているかと

思いますが。2012年に他界されました、

切り絵作家の成田一徹さん。バー評論家とい

う肩書きも持っていらっしゃいましたが、切

り絵の印象がとても強く残っています。バーでの

情景を作品としたものが中心ですが、街をテーマに

した作品も多く、東京シルエットなど、東京の複雑

な街並みをモノクロの切り絵に仕立てた作品集など

もあるため、妙に勘が働き、その場で谷中と成田氏

の因果関係についての検索に没頭しましたが、そん

な事実は全く無く、勝手な思い込みで肩を落としま

したが、この切り絵。全長約175メートルの短い

商店街に、三十一枚も飾られています。結構な密度

でした。

このように一店舗につき、二枚というケースもいく

つか見受けられました。切り絵の内容は昔の谷中の

風景で、寺院やお墓、それと、この界隈は坂がとて

も多く、街の一つの特徴でもあるために、等間隔で

散見出来ました。

どれも魅力的な坂ですね。国土が狭く島国である

日本は、坂とは切っても切れない縁があります。坂

の多い街での暮らし。斜面に対しての建築技術。

利便性はともかく、そこには創意工夫の美意識が凝

縮されているように思えるのです。

墓地です。おそらく、昔の谷中霊園ではないかと

思われます。鬱蒼とした森林を背景にあまねくばか

りの墓石が整然と列を成していますね。森を切り拓

いて墓地にしたのでしょうか。谷中霊園は桜も有名

です。宴会ではなく、静かに桜を眺めたい方にはよ

ろしいかと思います。徳川家をはじめ、数々の文化

人、芸能人が眠る由緒正しき霊園です。そして私、

ここにきて気がついたのですが、食べ歩きのつもり

が、食べ物の写真を一枚も撮っていませんでした

笑 ただ、思うのです。酒とスマートフォンを片手

に食べ歩き。大いに結構。大好きです。商店街を語

る上で、飲食店の存在は必要不可欠。大好きです。

有名店の行列、並びましょう。大好きです。でも

ね、皆さん。それだけじゃない。正直、どこの商店

街も大差ない。この日だって、イカ焼き食べて、メ

ンチカツを頬張り、ビールで流し込みました。かき

氷屋は行列で、一番の目当てだった魚屋は休業日。

滅多に食べないソフトクリームを舐め回し、意味が

あるのかないのか、お洒落な古民家カフェにも行き

ました。しかし、それだけじゃない。時の物に目を

向けてばかりでは面白くありません。歴史を見てあ

げましょう。私が谷中銀座に感銘を受けたのは、そ

の歴史をこういった、美術という観点から表現なさ

っている事にあります。洒落てるじゃないですか、

粋ですよ。切り絵で歴史を語る商店街。谷中銀座。

またお邪魔した際には、もう一つの特色である、猫

にどっぷり浸かりたいと思います。

猫好きなので 笑

最後に一つだけ。

これは谷中銀座の入り口にある夕焼けだんだん

という有名な階段です。猫の商店街という顔を持つ

商店街でもあったので、夕焼けニャンニャンとダブ

って見えました。では、また、、

 

谷中銀座

成田一徹