007。ダニエル・クレイグ版完結。ネタバレ無し。多分、、


 

「ヴェスパー・マティーニを」

「、、ベスパー、、マティーニ、、ですか?」

「そう、ジェームズ・ボンドの」

「ボンド・マティーニではなくて」

「いや、新しい方」

「少々調べますのでお待ちを、、」

皆さんこんにちは、バーシエールの岡本です。

こちらのナイスミドル(死語)は皆さんご存知

の6代目ジェームズ・ボンドを演じられました、

ダニエル・クレイグ氏ですね。タイトルにもあ

るように、只今公開中の007/ ノー・タイム・

トゥ・ダイをもちましてダニエル・クレイグは

007を卒業という運びになりました。とにか

くこちらの作品もまた、公開を待ち侘びた映画

の一つですね。1年半ほどになりますか。コロ

ナ禍によって延期されたのは。私は既に二度

ほど劇場に足を運んでおりますが、未だ観飽き

ておりません 笑 ですが、私などまだまだラ

イトな方で、4、5回の方もおられるかもしれ

ませんね。それほど注目度の高い映画だという

事になります。

 

●   逆境のジェームズ・ボンド

 

2002年の007/ ダイ・アナザー・デイを

最後に、5代目ジェームズ・ボンドを7年間演

じたピアーズ・ブロスナンの突然の降板により、

大抜擢となったダニエル。しかし、当時世間の

目は冷たく、彼の容姿や経歴に対する批判は熾烈

を極め、まさに最悪のスタート地点からの出発

となりました。それでも007シリーズのプロデ

ューサーであるバーバラ・ブロッコリ氏や制作

サイドの強いこだわりと、それに応えるダニエル

本人の強い意志により撮影は進められ、200

6年の初作品。007/カジノ・ロワイヤルの公開

へと漕ぎ着けました。そして、蓋を開けてみれば

シリーズ最高の興行成績を記録し、これを機に

ダニエル・クレイグは名実ともに世界のジェーム

ズ・ボンドとなっていったのです。

 

●  今までの007シリーズとの相違点

 

ダニエル・クレイグ版のジェームズボンドは、

今までで一番人間臭いジェームズ・ボンドとい

われています。人を殺す事に迷い、女性とあら

ばすぐに体を重ねたりといった所謂、お痛は

しません。そこには必ず愛があり、その愛がスト

ーリーに絡んでいくのです。従来のジェームズ・

ボンドであれば、任務遂行のためなら迷わず人を

殺し、情報収集とかこつけてだれかれ構わず女性

と寝たりなど日常で。それもまた007シリーズ

の見どころでさえありました。5代目ジェームズ

・ボンドの初作品、ゴールデンアイでは、ボンド

の上司であるMからボンドへ、「あなたはセク

シストでミソジニストの恐竜で冷戦の遺物だ」

などと、詰り、主人公であるボンドを批判する

シーンが目立ちました。劇中の台詞にまで及ぶ

ボンドの蛮行。私個人としては、モラルよりエン

タメ優先なので気にはならないのですが、それは

私が男であり、何より、個人の思想などではどう

にもならない世の中の風潮がこれらを問題視した

のです。007シリーズといえば、世界屈指の

ドル箱ムービーですから、その影響力は計り知れ

ません。現代社会の問題として多く取り上げられ

ている女性蔑視や人種差別など007シリーズは

完全に黒ですよね 笑 トップアスリートが

人間性を求められるように、影響力のある者は、

様々な問題に配慮しなければならないのです。

今までこれらが許されてきたのは、MI6という

秘密情報機関がイギリスに実在し、原作者のイアン

・フレミング氏がこの機関の出身者であった事から

、リアリティを売り物にしていたはずですから、

そのリアルを追求した結果なのだという建前が通用

していたからなのかもしれません。いずれにして

も時代が違うのです。何せ1950年代の価値観

ですから。

ダニエル・クレイグ版の007には、人種差別に

ついての配慮も成されているように見受けられま

す。Mの秘書であるマネー・ペニー役は今回で

4代目になりますが、歴代のマネー・ペニーは

全て白人で、4代目にして初めて褐色の美女が

起用されており、公開中の作品には、ストーリー

上で登場するもう一人の007が存在するのです

が、こちらも同様に黒人の美女が演じています。

このように、様々な改変を行っていく中で、主人

公である、ジェームズ・ボンドのイメージを払拭

するためには、今までになかったキャスティング

が必要だと制作サイドは考えたのでしょうね。

ダニエル・クレイグ版は従来の007シリーズの

ように一作品完結ではなく、全て繋がっています。

ストーリー上でも過去の払拭をテーマとしていま

すから、このあたりも巧みにリアルとなぞらえて

いるのでしょうね。だからこそのダニエル・クレ

イグ。期待に応え、見事に演じ切ったと私は思い

ます。

 

●  ヴェスパー・マティーニついて

 

 

007シリーズといえば、ボンドアイテムですよね。

ボンド・カーにボンド・ウォッチ。今作品でも、

MI6の武器開発担当であるQが大活躍します。

ボンド・カーであるアストンマーティンDB5が

今シリーズ最後とあって、隠しガトリングガンに

防弾、マキビシ、スモークと全機能大放出とばかり

に大盤振る舞いします。そして我々の業界に大きな

影響をもたらしたボンド・マティーニの存在。

007シリーズにはバーでの飲酒シーンが必ず用意

されており、「ウォッカ・マティーニをステアでは

なく、シェイクで」お約束の台詞で締めます。

今シリーズにはこのあたりも改変が行われており、

第一作のカジノ・ロワイヤルでレシピが変わり、

従来のウォッカにベルモットを加えてシェイクでは

なく、更にジンを加えてベルモットをキナリレという

トニックワインへ変えます。現在キナリレは販売

されておりませんので、リレブランという酒で

代用するのですが、これもまた歴史的な改変に

なります。21作目にしてルーティンを変える

というのは、変化に対する強い意気込みが窺え

ますよね。こちらのカクテルはヴェスパーと名付

けられる事になったのですが、ヴェスパーという

のは、カジノ・ロワイヤルに登場するボンド

ガールの名で、ボンドが初めて本気で愛した女性

という触れ込みです。この女優さんがまた美しい

こと。エヴァ・グリーンというダニエルと同様に

当時まだ無名でしたが、今ではドラマや映画で

忙しくなさっているようです。そう、、ダニエル

・クレイグも無名だったのです。かく云う私も

カジノ・ロワイヤルまで存じ上げませんでした。

当時先代のピアーズが降板して、また誰かやるみ

たいだな、くらいの弱い印象で、カジノ・ロワイ

ヤルを拝見したのも公開からずっと後の事でした

ので、今回のブログでの冒頭のお客様とのやりと

りが、当時リアルに実現しました 笑

我々の業界では、ボンド・マティーニを知らない

バーテンダーはいないと言ってしまえるほど、

007シリーズの影響は大きいのです。カジノ・

ロワイヤルが公開された2006年以降、突然

始まったヴェスパーブーム。ボンド・マティーニ

に慣れ親しんでいた私は渋々リレブランを用意し、

注文に応えていましたが、カジノ・ロワイヤルを

拝見した途端、作品に対する世間の目と同様に、

気持ちの入れ方がまるで変わりました。映画

自体のクオリティーが明らかに上がっているの

です。古き良きものは残し、新しい風を吹き込む。

これは簡単な作業ではありません。歴史が古けれ

ば古いほどそのしがらみは強く、頑迷で、それで

いて繊細なものだから、簡単に取り除く事ができ

ないのです。そしてあれから15年。カジノ・

ロワイヤルで自らヴェスパーと名付けたボンドは

、その後の作品でもこのカクテルを注文しますが、

名前を忘れたふりなどをして、ヴェスパーとの

過去を払拭しようとします。そして遂に、只今

公開中のノー・タイム・トゥ・ダイでは、

「マティーニをステアではなく、シェイクで」

お約束の台詞を復活させ、ボンド・マティーニ

へと戻したのです。バーカウンターにはスミノフ

ウォッカのみ映っておりましたので、間違い無い

かと思います。これは過去の払拭が完了したと

いう事と、007の次回作へのバトンタッチが

描写されたものと私は解釈しました。

 

●  ノー・タイム・トゥ・ダイ

 

さて、最後になりますが、シリーズ25作目に

して、ダニエル・クレイグ版最後の作品となった

この作品のタイトルの意味。直訳しますと、

死ぬための時間はない。になりますが、

死んでる場合ではない。と訳すのが正解なので

しょうかね。歴史的な007の最後の作品です

から、タイトルから汲み取れる情報が非常に

気になります。勿論映画の内容が反映されている

とは思いますが、今後に繋がるメタ的要素が

含まれていそうで、つい深読みしてしまいます。

衝撃の結末だっただけに様々な憶測を呼ぶのです。

皆さんには是非本編を観賞してもらいたいので

結末は伏せますが、最後の最後まで、ついぞ

見る事のなかったジェームズ・ボンド。007

であったことは確かです。もちろん、次回作の

ジェームズ・ボンドやその内容に期待は高まり

ますが、今はまだ、ダニエル・クレイグ版の余韻

にどっぷりと浸っていたいと思います。

では、また、、

ボンドガールのアナ・デ・アルマス。

射抜かれました。暫くファンです、、