バンクシー展。


皆さんこんにちは、バーシエールの岡本です。

やはり冬は寒いのですね。雪は勘弁して欲しいの

ですが、今季は多そうな気配がしますね。どうなる

ことやら、、。

さて、待望のバンクシー展が東京は原宿にて

開催されております。お邪魔したのは先月の開催日

翌日だったので、少し時間が空いてしまいました

が、先駆けて行ってまいりましたので、その様子を

今回はお話しさせて頂きます。

まず、バンクシーとは、身元不明の路上アーティス

トで、その作風は極めてセンシティブなヴァンダリ

ズムに富んでおり、世を儚み、嘲笑し、皮肉たっぷ

りのメタファーが溢れています。彼(男性である

事は判明しています)の動向は、秩序の有無さえも

不明で、神出鬼没に現れては、落書きという崇高な

儀式を完成させます。作品の多くはイングランドに

集中していて、これは彼がイギリス国籍であると

いう可能性を示唆していますが、世界各国、無差別

に作品が顕現するため、バンクシーは複数人いると

いう説もあります。2000年代に入り現在に

至るまで、最も知名度を上げたアーティストの中の

一人ではないでしょうか。しかし、どこまでいって

も落書きは落書きですから、その作風からも芸術

テロリストなどと呼ばれる事もあります。身元を

明かさないのは、見つかれば捕まってしまうという

、ごく当たり前の現実があるからなのです。

作品は主に、ステンシルシートによるものが多い

です。ステンシルシートとは、所謂、雛形で、

要は予め用意したシートにペイントしたり、

スプレーを吹き掛ける事で転写する比較的

お手軽で、現場での作業時間の短縮に繋がる技法

です。メリットとしては、多少の凹凸なら描けて

しまうという事もありますが、作業時間の短縮は

かなり大きいのだと思います。まあ、言ってみれば

一発勝負ですからね。今日はここまでと、次回

に持ち越してしまえば、見つかってしまって消さ

れるか、警戒されて待ち伏せされるというのも

ありそうです。それと特に街中である場合、

無許可の路上アートは常に警察との戦いでもあり

ますから、とにかく現地での時間がありません。

工程がいくつあるのかは個人差があるのでしょう

けど、細かい作業はしていられないという訳

です。考え込むなど以ての外なのでしょうね 笑

着手してから逃走まで、シミュレーションを入念

に行い、迅速な行動が求められる犯行となるので

しょう。

警察沙汰も多く経験している事でしょう。時には

怪盗ルパンさながらの逃走劇があったのかもしれ

ません 笑 やはり天敵が存在していて、お互いに

大捕物劇を生き甲斐に人生を楽しんでいたり 笑

そんな夢のある妄想を抱かせてくれるバンクシー

はやはり、アウトローとしての魅力があるの

でしょうね。落書きで社会風刺して逃げているだけ

なのですけどね 笑 バンクシーの作品の中には

警察や警察官をモデルにしている作品が、上の三点

だけではなく、無数に存在します。勿論、反体制の

精神だったり組織そのものを揶揄する作品は多いの

ですが、時折情愛を感じたり、ブラックユーモアに

富んだ一面を窺わせる作品も多く存在します。

これは全ての作品に共通するのですが、神の如き

視点で森羅万象に通じ、愛とユーモアの反体制を

落書きという不道徳な手段で伝える。隠微な。それ

でいて普遍性のあるメッセージを。遊び心満載で。

何かロックですよねぇ。特に反体制であったり、

左翼的な要素はパンクロックの気風に酷似してい

ます。まあ、イギリスはパンクロックの聖地でも

あるので、その性質はどこか根っ子で繋がっている

のでしょうね。それに、バンクシーの正体は

ミュージシャンとも噂されていたりしますから。

こちらは、スティーブ・ラザリデス氏。イギリスの

画商で、何とバンクシーのマネージャーを10年

もの間務めていた人物。金銭面でのマネジメントを

含め、バンクシー専属のカメラマンとして同行し

ていました。その10年間をまとめた写真集が

こちら。

 【写真集】BANKSY CAPTURED by STEVE LAZARIDES Vol.1 2nd edition

私は彼の正体にあまり興味がないのですが、

どのような状況で壁面と向き合っているのか、

ステンシル製作の工程など。フードを目深に

被ったお決まりのスタイルで写真に収められて

います。興味がある方は購入してみても面白い

かもしれません。聞いたところによると、紛争

地域で、複数の銃口を向けられながら作業をした

経験があるのだとか 笑 これは本人も然ること

ながら、ラザリデス氏や取り巻きは相当肝を

冷やした事でしょうね 笑 落書きで蜂の巣に

されたのでは割りに合いません 笑

続いてこちらは2006年に起きた、バンクシー

事件簿の中でも特に有名なシュレッダー事件の模様

です。オークション会場で落札されたばかりの

バンクシーの作品(風船と少女)が、まさに、

オークショニア・ハンマーが鳴り響いたその時、

不審なアラームと同時に額縁の自動仕掛けがおもむ

ろに動き出し、下方向へと作品がスライドして

縦にシュレッドされてしまうという、何とも

ミステリアスな事件です。これは表向き、バンク

シーのオークションビジネスに対する批判による

テロ的犯行だと言われていますが、シュレッダーが

仕込まれた額縁など、通常の物と形状が異なるに

決まっていますから、このオークションを取り仕切

っていた老舗のオークション会社であるサザビーズ

はこの事実を知っていたのだと私は思います。

そして何より、史上初のオークション会場にて

ライブで生まれた作品だという触れ込みで、落札

時には一億五千万円ほどであった金額も、

『愛はゴミ箱の中に』というタイトルに名前を

変え、二倍以上にも跳ね上がり、そのままの状態

で持ち帰られ、この欺瞞だらけのオークション

は幕を閉じたそうです。バンクシーのオークション

会場での批判はこれが初めてではないし、犯行声明

がバンクシーサイドから出ており、その舞台裏の

様子もSNS上で公開されていますから、オークショ

ンビジネスに対してのバンクシーの批判は本物なの

でしょうね。しかし、どのような場面でも商談に

持ち込むサザビーズの手腕と、その波に乗って投資

する投資家勢の経済力。そしてやはり、どれだけ

世の中を批判し、悪態をついても揺るがないバンク

シーの知名度と人気には、只々、圧倒されます 笑

さて、ここで私のお気に入りの作品を二点、

ご紹介させて頂きます。まず、上の画像がこれ、

イギリスのポンド紙幣を真似た、所謂偽札です。

しかも、バンクシーはこのお札をノッティング

ヒルの大規模なカーニバルで物理的にバラ撒いた

のです。バンク・オブ・イングランドの文字を

バンクシー・オブ・イングランドと書き換えて言葉

遊びをしてみたり、エリザベス2世の肖像画を故・

ダイアナ姫に変えてみたりと遊び心満載で工夫を

凝らすのはわかるのですが、悪ノリが過ぎますね

笑 どれも犯罪ですけど、これはタチが悪い 笑

更にこのお札、少しの間流通してしまったらしい

ですよ。明らかに偽札とわかっていながら使う方も

どうかと 笑 然しものバンクシーもお札が使われ

ていた事が分かると、そこからはバラ撒くのを

控え、回収に廻ったようですが、バラ撒いた枚数と

流通してしまった枚数。拾われなかった枚数も計算

に入れると、かなりの枚数が足りなかったらしいの

です。おそらくバンクシーの仕業だと感づいた者達

はいち早くその偽札の別の意味での価値に気が付い

たのでしょう。そのうち高値で世の中を出回る日が

来るかもしれませんね 笑

そして下の画像。タイトルは、ラブ・イズ・イン・

ジ・エア。愛は空中にと訳せば良いのでしょうか。

俗称でフラワー・スローなどと呼ばれる事もある

ようです。この作品はバンクシーの初期の頃の

作品で、代表作の一つです。パレスチナ自治区の

ベツレヘム(キリストの生誕他とされている)

という街のガソリンスタンド裏の壁面に描かれ

ました。

現地ではこのように描かれていたようです。もはや

ストリートアートというより、宿命的に壁面に

浮かび上がった神の啓示が如き威光。こちらの

作品も勿論、社会風刺が施されています。中東と

いえば紛争が絶えませんからね。パレスチナとイス

ラエルとの長い戦いの中で、壁面のような若者が

有ったのかもしれません。パレスチナ側での作品

ということで、この若者はパレスチナの人間である

事がわかります。イスラエルへ向けて険しい面持ち

で何かを投げ込もうとしています。石か火炎瓶か、

その風貌や投げ込む姿勢からはそのように連想し

ますが、この若者が投げ込もうとしているのは

花束。そう。真剣に花束を投げ込もうとしている

のです。タイトルは、愛は空中に、ですので、この

場合、花束は愛の象徴になるのでしょう。これは

どんな変革も、平和的解決で成さねばならないと

いう、活動家としての側面を垣間見たバンクシーの

強いメッセージが込められています。しかし、原寸

がこれほど巨大だとはね、、笑 大きさは気持ちの

強さなのでしょうか、、。まあ、サイズはともか

く、愛の象徴が花束であるというのも洒落ていま

す。「愛でも喰らいやがれ」と吹き出しを付け足し

てあげたいくらい 笑

作品に込められた強いメッセージやそのヴィジュ

アル。大胆不敵な大きさなど、胸にグッとくる

良作品だと私は思います。まあ、もっとも。バンク

シー本人が作品として描いているのかは不明です

けどね 笑

さて、長くなりましたが、今回は現在東京原宿にて

開催されているバンクシー展についてお話させて

頂きました。著作権フリーなのか、館内での写真

撮影は全て許可されています。音声ガイドは無料

ですが、スマートフォンなどのモバイル端末と、

イヤホンが必要になってくるでしょう。それと、

経験からして、作品数が他の美術展より多く、

かなりのボリュームがありますので、音声ガイドを

利用する場合には、たっぷりと時間を作るか、ある

程度で見切りをつけなければ終わりません 笑

ちなみに私は二時間半ほどで見込んで臨みました

が、全く時間が足りませんでした 笑 東京は

3月8日(火曜日)までの開催となっておりますの

で、興味のある方は是非足を運んでみてください。

最後になりますが、今回の展覧会は、バンクシーは

天才か反逆者かというお題目があり、公式のウェブ

サイトや現地でも投票出来るようになっております

が、どうか気にせずに楽しんで頂きたい。人は

表裏一体であり、どちらにでもなり得るからです。

テーゼがあれば、アンチテーゼもある。理性を

軸にそれらを使い分けていくのが人間です。

そのあたり、バンクシーの世界に触れてみて、何か

一つでも感じ取ることが出来れば観る価値はあった

のでしょうね。あ、それと皆さん、落書きは犯罪で

すよ。真似をしてはいけません 笑

では、また、、

バンクシー展