ガリレオ劇場版第三弾。


皆さんこんにちは、バーシエールの岡本です。

台風ばかりで気が滅入りますね。一刻も早く過ぎ

去ってもらいたいものです。

さて、今回はタイトルにもある通り、テレビドラマ

でお馴染みのガリレオシリーズの劇場版第三弾。

『沈黙のパレード』が前作の『真夏の方程式』から

およそ9年ぶりの公開ということで、わたくし

早速拝見して参りましたので、過去二作品と共に

振り返ってゆきたいと思います。

まず、ガリレオとは、東野圭吾原作の連作ミステリ

ー小説で、物理学者である湯川学が、あくまでも

科学にのっとって不可解な事件を解決してゆく

という、連続ミステリー小説の世界では型破りの

小説シリーズです。それまで日本の連続ミステリー

小説といえば、某電車か、某寺か、某霊柩車。

猫なんかもありましたね 笑 まあ、そんな分野

でしたからね。ここまで科学を駆使して整合性の

取れたミステリーシリーズを私は知りません。

元々東野さんは文学系ではなく、電気工学の畑から

小説家になった経緯がありますから、ガリレオだけ

ではなく、電気工学に基づいた作品は他にも多々

あります。本作品は皆さんご周知の通り、主人公の

湯川学を俳優の福山雅治さんが演じ、絶大な高視聴

率を記録して、東野圭吾さんの小説家人生でも節目

になった、第134回直木賞受賞作品。『容疑者X

の献身』の映画化にまで漕ぎ着けました。200

8年。この作品が現在に至る三作目のガリレオ

ムービーシリーズの一作目となりました。

言うまでもなく名作です。ガリレオムービーの秀逸

さといえば、原作を裏切らずに映画としての完成度

もしっかり高いという、ほぼ完璧な仕上がりを

誇っているあたりでしょうか。キャラクター同士

の立ち位置の相違などは全く気になりません。

テレビドラマではフジの月9枠でしたから、数字の

ためなら原作ではみられない多少の色恋沙汰や

シーンの割愛はご愛嬌。

本作は天才物理学者と天才数学者の対決という

触れ込みで話題を呼びましたが、天才と称される

科学者達が愛や友情といった、ロジックだけでは

解決出来ない極めて心情的なぶつかり合いを学者

ならではの独特な距離感でみせてくれます。この

あたりの機微もまた見どころではないでしょうか。

主人公湯川の同胞にしてライバル。天才数学者の

石神を演じたのは俳優の堤真一さん。石神は母親

の病をきっかけに研究の道を断念し、一介の数学

教師として生きてゆきますが、うまく世の中に

溶け込めずに孤立してゆきます。正直なところ。

本作の主人公は湯川ではなく石神です。どの作品

でも結果を出してきた堤さんですが、本作でも

名だたる賞をいくつも受賞し、湯川とは対象的に

人生の落伍者である石神を見事に演じ切っており

ました。

人は才能を活かしきれず、己を異端だと感じた

とき、絶望と引き換えに、こんな風に無償の愛を

手に入れることが出来るのかもしれません。まだ

ご覧になっていない方は是非一度ご視聴ください。

続きまして、こちらが2013年に公開となった

『真夏の方程式』。ガリレオムービーの二作目と

なった訳ですが、こちらの作品は賛否が非常に

顕著に分かれます。タイトル通り、季節は真夏で、

海辺の町が舞台となっており、夏休みに帰省する

少年が物語のキーパーソンとなってゆくのですが

、当時子供に何をやらせているんだという批判の

声が多く聞かれました。まあ、その通りなのですが

、私は肯定派ですからね。モラル問題はさておき、

湯川と少年の掛け合いはとても微笑ましく、特に

夏休みの自由研究のエピソードは見るものが童心に

帰り、ワクワクしながら見守ったはずです。要する

に、少年を起用するにあたって、批判する要素よ

り、賞賛を与える要素の方が優っているという

ことです。まあ、あくまでも私の見解ですけれど。

本作品は舞台となっている玻璃ヶ浦(はりがうら)

という架空の海を開発事業から守るという本筋の

テーマがあり、海洋生物の環境問題についての

説明会では、海底鉱物資源開発の海底ボーリング

事業者側と、地元民の反対派、賛成派による三つ

巴の論争がその後も物語の中心となって進んで

ゆきます。湯川はその説明会の有識者として参加

しており、説明会初日の夜、宿泊先での不可解

な殺人事件に巻き込まれてゆくのでした。

地元の反対運動のリーダー。成美役を女優の杏さん

が演じています。玻璃ヶ浦という海は静岡県の

西伊豆や愛媛県の松山市がモデルとなったよう

です。良く日焼けした杏さんのシュノーケル姿は

健康美そのもの。前作、『容疑者Xの献身』では、

石神、湯川の雪山登山が非常に印象的でしたが、

本作では、成美と湯川のシュノーケリングシーンが

用意されていて、珊瑚や色とりどりの小魚など、

マリンレジャーならではの美しさも楽しめます。

その他、キャスト陣はこの当時でもベテラン揃いで

見応えは充分にあります。特に白竜さんのお芝居は

目を見張るものがありますよ。あの方怖さだけでは

ないのですね 笑

犯罪とは、犯す者、犯される者の器の大きさに

よってその性質が大きく変わってしまうもの。

司法や刑法だけでは推量れない不思議な感覚に

囚われる、そんな作品でした。賛否両論の問題作

だとは思いますが、私はしっかり感動し、滂沱の

如く涙しました 笑 こちらも是非ご覧になって

ください。

さて、最後になりますが、こちらが現在劇場版が

公開中の『沈黙のパレード』となります。

沈黙は金なりという格言がありますが、こちらの

作品はまさに、沈黙を金に変えた鬼畜の事件簿

になります。過去と現在と、ある二つの失踪殺人

事件の容疑者である蓮沼寛一役を俳優の村上淳さん

が演じています。黙秘権を最大限に利用し、所謂、

〝完全黙秘〟に徹した鉄の心臓を持つ酷薄なモン

スター蓮沼を見事に演じております。非常に重要

な役どころですので注目しておりましたが、

原作とはまた一味違う蓮沼ではあるものの、物語の

元凶でありながらも、苦悩など一切無縁で、自由で

あり続け、冷笑的に世を儚むその悪辣さ。という

点では、はまり役だったのではと私は思います。

村上純さんはモデル出身でお歳の割に面立ちが

可愛らしいので、ヒール役としてはどうなのかと

心配しておりましたが、ひとまず及第点はクリア。

といったところでしょうか。

さて、本編を拝見させてもらい。率直な感想と

致しましては、正直、物足りないですね。

しかし、これには理由がありまして、原作者の

東野圭吾さんが公言しておりましたが、本作は

ガリレオシリーズの集大成になるそうです。です

から原作である小説もページ数も含めてかなりの

ボリュームに仕上がっているのです。トリックの

緻密さや人間関係の構成があまりに複雑で、今の

邦画界の常識的な枠では尺が足りていません。

2時間10分とけっして短くはない上映時間なの

ですが、それでもやはり詰め込みきれなかったの

でしょうね。今思えば、原作ですら書き足りてい

ないのでは、と想像出来るくらい、根の深い作品

なのです。それと個人的には、原作に三度ほど

登場するショットバーのシーンがまるで用意されて

いなかったのには酷く落胆しました。一作目の

『容疑者Xの献身』では、石神宅で湯川と石神が

酒を酌み交わすシーンがあり、原作では日本酒で

あったものが劇場版ではシングルモルトウイスキー

のボウモアに置き換えられていたのが印象的でし

た。『沈黙のパレード』では、湯川が同じくシング

ルモルトウイスキーのアードベッグをソーダで

割っています。福山さんはプライベートでもバー

を好み、洋酒を嗜むと聞いています。憶測でしか

ないのですが、原作が福山さんに寄せた結果の

バーシーンだったのではないかと思うのです。

とても楽しみにしておりましたのに残念でなり

ません。まあ、代わりにファミリーレストランで

旨そうなかき氷を頬張っていましたがね 笑 この

シーンは原作にはない、福山さんと内海薫役の

柴咲コウさんのおよそ9年ぶりの再会一発目の

掛け合いになった撮影だったようです。丁々発止に

コミカルなお芝居をするお二人を目の当たりに

すると、当時が一瞬で蘇ります。湯川と内海の

久々の再会シーンなので、福山さんと柴崎さん

の9年ぶりの再会とリンクさせたシーンだった

のでしょうね。

〝沈黙は連鎖する ─それは罪か、愛か〟これが

本作のキャッチフレーズとなっています。さて

どうなのでしょうか。その答えは作品の中に。

私は黙秘します 笑 キャスト陣はベテラン勢を

含め、豪華な顔ぶれであるし、完成度はやはり高い

映画ですので、皆さんも是非ご覧になってくださ

い。

最後になりますが、ガリレオムービーはここで一旦

幕引きのようです。コロナ禍に入ってしまったり

とかなりの時間が経過しましたが、計り知れない

ほどの感動を与えられました。もちろん三作品とも

素晴らしく、テレビドラマシリーズのように余計

な描写がありませんので、原作も含め私は劇場版を

お勧めします。

東野圭吾にはハズレがない。などとよく耳にします

。どれほどの研鑽を積み、どれほどの柔軟性が

あればこれだけの数のヒット作を生めるように

なるのでしょうか。凡庸な私には想像も付きませ

んね。毎度毎度、驚嘆の念を禁じ得ません。

ミステリーとは人の心です。人の心がミステリーを

呼ぶのです。しかし、これほど血の通った作品を

生み出す理数系畑の作家さんも珍しいですよね。

今後のご活躍を祈りつつ、今回はこの辺で。

では、また、、