a piacere(ア ピアチェーレ)


皆さんこんにちは、バーシエールの岡本です。

食欲の秋、スポーツの秋、芸術の秋と。秋が

深まりを増すと何かと食指が働きませんか。

今回、極めて恣意的にオーケストラを拝聴して

参りました。秋の高い空を眺めていたらいい音楽

が無性に聴きたくなったのです。手当たり次第

に探して辿り着いた曲目はみんな大好きベートー

ヴェンの交響曲第7番とそれに付随して8番。

私、実は7番をライブで聴いたことがなかったん

ですよね。あまりに有名な楽曲なので耳にする

機会が多いため、聴いた気になっていたのですが、

振り返ってみれば、ベートーヴェンのシンフォ

ニーは5番、9番しか経験しておりませんでし

た 笑 これはもう渡に船ということでチケット

を即購入。何せ締切日当日だったので末席も末席。

奥まった角の席を確保。まあ、それでも良いの

です。今回の私のテーマはア ピアチェーレ

(自由に、気ままに)ですから。下準備はなし。

たまさかに聴きたくなって、たまさかに席が取れ

て。あとは流れに任せてみる。そんな日もあり

ます。

さて、やって参りました。サントリーホールです。

コロナ禍もあり、ライブコンサート自体控えて

おりましたので随分とご無沙汰してしまいました。

最後に訪れたのは2014年か15年か。テニス

仲間の所属する楽団が開催した、これもまたベ

ートーヴェンの9番でした。

前説が終わり。楽団とコンサートマスターが揃う

と、速やかにチューニングが行われ、拍手と共に

コンダクターが入場し、間もなく交響曲8番の

演奏が始まりました。

今回指揮を取ったのはこの方。ピエタリ・インキ

ネン。オーケストラは日本フィルハーモニー交響

楽団です。インキネンさんはフィンランド出身の

ヴァイオリニスト。シベリウス音楽院にて学びを

深めたこともあり、演奏会ではシベリウスの曲を

指揮することが多いようです。現在は日フィルの

首席指揮者を務めています。私は今回演目だけで

チョイスしましたので、ほぼ場当たり的に聴かせ

て頂きましたが、普段シベリウスをなさっている

だけあって、7番8番共にとてもダイナミックに

指揮を取っていらっしゃいました。

演奏は8番を終え15分の休憩ののち、メイン

である7番の演奏に入ります。まずは長めのテュ

ッティ。一斉演奏から壮大に始まります。正直。

第一楽章は私好みの演奏ではなかったのですが、

第一楽章序奏から主題に入る手前に私の一番の

お気に入りパートであるフルートのソロがある

のですが、このパートを女性が担当なさっていて

くれたおかげで何とかモチベーションを維持出来

ました。こちらのパート。私は勝手に

〝小鳥のさえずり〟と呼んでいます 笑 静まり

返った場内にフルートの繊細な音色が響きます。

とても可愛らしいパートですので、出来れば女性

に。というのが私の個人的な願望です 笑

第一楽章は一貫してキャッチーなメロディライン

ですので、ドラマや映画にアニメでもよく使われ

ています。やはり爆発的に有名になったのは

『のだめカンタービレ』なのでしょうが、私の中

で印象が一番強いのは、SFアニメの金字塔。

『銀河英雄伝説』ですかね。銀英伝では第一楽章

だけではなく、第二、第四楽章も使用されており

ますので、非常に印象深いのです。あの壮大な

宇宙艦隊戦との相性は抜群でしたね。心が躍り

ます。

ノリの良い第一楽章を終え、曲は一転してメラン

コリックな第二楽章へと移ります。アレグロ(速

いテンポ)かアレグレット(やや速いテンポ)で

指揮者によって異なるらしいのですが、今回の

演奏は私の耳が確かなら、アレグレットであった

と思います 笑 しめやかに、まるでレクイエム

のような曲調ですから、速くする必要はないと

思うのですが。諸外国では葬儀でも使われていたり

するようですからね。こちらの楽章は管楽器の

フェードアウトで締めます。この辺りからオーケ

ストラにまとまりが出来てきました。第一楽章は

少し残念でしたからね。造詣が深い方達なので

しょうね。私の席の両サイドが深いため息を何度

も吐いていましたから 笑 まあ、仕方ない 笑

そして曲は再び一転して華やかな第三楽章へと

入ります。所謂、スケルツォです。速さはプレス

ト(極めて速く)で三拍の速いテンポに加えて

スタッカートの主題が続き、強弱の付け方や

休符の入り方が変わっているので飽きずに楽しめ

ます。独特の休符で唐突に終わり、一呼吸おいて

ダンサブルな第四楽章が幕を開けます。この楽章

はベートーヴェンが泥酔して作ったのでは、と

噂されるほど、力強く、激しい曲調なのです。

ロックであると評されることが多く、速さは

アレグロで、更にコン・ブリオ(元気よく)で

演奏されます。途中、短調に変わったり、

音が飛び跳ねたりと曲の表情の移り変わりが激し

く。とにかく、速いテンポで反復反復ですから、

こちらもヘッドバンキングが止まりません 笑

あの聴き手を巻き込むグルーヴ感はもはやクラ

シックの範疇を超えています。渋面を作った両

サイドの間で私だけ頭を振っているという奇妙な

絵面の中、演奏は文字通り大団円を迎え、大喝采

で幕を下ろしました。私は〝小鳥のさえずり〟を

奏でてくれたフルート奏者の女性を目で追いなが

ら席を立ち、この日一番の感動をくれた人物へ

黙礼し、会場を後にしました。

さて、演奏会が終われば腹ごしらえです。斜向か

いのカフェへと駆け込みました。ランチタイムが

終わってしまうからです 笑 この場所には以前

、オーバカナルというチェーン展開しているブラ

ッスリーが存在したのですが、どうやら2018

年に閉店したようですね。サントリーホールでの

演奏会の後は大抵の場合、オーバカナルで田舎風

テリーヌとスプリッツァで一杯やりながら演奏会

の余韻に浸っていたのですが残念。画像のカフェ

は同じ場所だからと、ほとんどルーティンように

吸い込まれました。スプリッツァを啜って一息

吐くと。演奏会の余韻が押し寄せてきます。

ベートーヴェンの交響曲には随所に対話が見受け

られます。7番だけではなく、6番(田園)など

が良い例でしょうか。私が感銘を受けたフルート

のソロパートにも、弦楽器との対話が用意されて

いて、旋律を掛け合いながら曲が進んでゆきます。

そう。まるで会話を楽しんでいるように。ここに

音楽の真髄をみます。音楽とは会話。曲を作る人

がいて、それを奏でる人がいる。我々はその方達

の声を、楽器を通して耳にし、話したければ賛辞

を与えて気持ちを伝えればいい。簡単なことなん

です。

つい考え込んでしまい。時計を見ればいい時間

です。この日は土曜日でしたから、私は仕事です。

小忙しく会計を済ませて外に出ると、気持ちの

良い風が体をすり抜けてゆきます。久々に気負う

ことなく良い時間を作れたことに大変満足しまし

た。皆さんも是非、空いた時間に忘れていた自分

らしさをもう一度見つけてみてください。堅く

考えず、思うがままに。そう。ア  ピアチェーレ

で。では、また、、

感染対策で発声が禁止されておりましたので

今ここで。Bravo!