港の老舗。


皆さんこんにちは、バーシエールの岡本です。

つい先日、所用で横浜へ出掛けた際に、帰り

しな、ふと思い当たって足を向けた店がありま

した。埠頭の片隅にあるその店は、映画やドラマ

など。様々なメディアで散見される辺境の老舗

バー。港町に憧れをもって育った私にとって、

この店もまた、訪れておきたい場所の一つだった

のです。私が初めてこの店の存在を知った頃には

埠頭のバーは二軒つがうように並んで商っており

ましたが、現在では、一軒のみ開けているようで

すね。1954年、同年に産声を上げた二つの

バー。ポーラスターとスターダスト。横浜のシン

ボリックなバーは、今でもその歴史を刻々と重ね

続けています。休業中のポーラスターは現在。

貸切営業のみで使われているようですね。以前、

当店に通っていたお客様が、海上自衛隊の横須賀

基地に勤務していた時期があり、その頃に通って

いたと話していたのがポーラスター。その話を

聞いてからというもの。より一層、頭の片隅では

焦燥の日々が続いておりました。横浜には何度

も訪れているのですが、どうしても行動範囲

が中心部に偏ってしまい、タイミングを失い続け

て幾星霜。やっとの思いで辿り着きました 笑

埠頭の片隅にこのネオン管です。バブル時代には

さぞ盛り上がっていたことでしょう 笑

早い時間。店の扉を開けると、高めのハイカウ

ンターにキャップを目深に被った男性が一人と、

最奥の窓際にあるボックスシートにはビール瓶

を二本。ノートパソコンの脇に並べて作業して

いる初老の白人男性が一人きり。しばらく待って

も店の人らしき人物が出てこなかったので、

ひとまずカウンター席に腰掛けて一息つくと、

そのうちキャップを被った男性が落ち着かない

様子でカウンターの奥に目を配りはじめ、ついに

は立ちがって店の人を呼びにいってくれました

笑 常連さんなのでしょうが、これは当店でも

よくある場面なので途端に親近感が増しましたね

笑 それと、この男性。スターダストのロゴと

旭日カラー刺繍の入ったスカジャン(横須賀

ジャンパー)を羽織っていました。強烈な地元臭

に痺れますね 笑 若く見えましたが、私の見立

てでは七十過ぎあたりの年嵩かと思います。毎日

のように通う古参の常連客らしかったので、敬意

を払って頭を下げました。

本来なら、港町カクテルでも頼みたいところ

ですが、エプロン姿で現れたママさんに面倒を

掛けてはいけません 笑 そのようなものは

関内や桜木町で注文すれば良いのです。ここは

我が青春の酒。マイヤーズラムとバドワイザーで

簡潔に喉を潤します。このあと徐々に客は増えま

したが、場所柄もあって、米国人ばかり来ます。

米海軍の横須賀基地もありますからね。当然そ

うなります。ママさんも最近のアーミーは態度が

悪いと嘆いておりました。どうやら、この日の前

日に一悶着あったようで、かなりの言い争いが

あった模様。ママさんの剣幕からして、ただ事

ではなかったのだろうということは伝わってきま

した。このとき。私は軽く聞き流して相槌を打っ

ておりましたが、うまく笑えていたかどうかは

わかりません 笑 頭の中では、私には到底

捌ききれないなどと考えておりました 笑 どの

店でも面倒は起きますが、話が通じないと面倒は

後々災いとなります。これは言葉の問題だけで

はなく、お国柄も大きく影響しますかね。

結構な鮮度の話に耳を傾けていると、つい、酒

が進んでしまいます。ネイティヴな英語が聞こえ

てくると、自然とアメリカの酒が飲みたくなるの

です。ジャックダニエル、ワイルドターキー。

もちろんチェイサーはバドワイザー。程よく

酔いが回ったところで音が欲しくなります。

ジュークボックスですね。このタイプは百円玉を

入れると選んだ曲を三曲掛けられます。現代では

デジタル式のものも存在するらしいのですが、

やはりレコード版がしっくりきます。ジューク

ボックスも商売ですから、店内にBGMはありま

せんので、これを使わずにいると、静かなまま

ですからね。ですが正直。このタイミングで

席を離れたのは、話の流れを変えたかったと

いうのが本音でしたけれど 笑

ジュークボックスのラインナップは、ジャズ、

オールディーズと、60年代のロックが中心でし

たので、しっとりとテネシーワルツから入り、

アンチェインド・メロディ、スタンドバイミー、

途中、スカジャンの常連さんがグレン・ミラーの

ムーンライトセレナーデを掛けてくれたので、

デューク・エリントンのA列車で行こうで繋ぎ、

最後はプレスリーのラブ・ミー・テンダーで

再びしっとり締めくくり、キリのいいところで

ママさんと常連さんに挨拶をしてお暇しました。

外に出ると、すっかり日が暮れていて、潮風が

軽く頬を撫ぜます。みなとみらいを遠目にしな

がら、良い一日であったと足取りも軽く、国道

15号線まで戻ってみると──。

暗い夜道に煌々と照らされた誘惑の魔の手。私

はいとも簡単に、それはもう、灯りに群がる羽虫

のように、何の躊躇いもなく吸い込まれてゆくの

でした 笑

さて、今回は憧れの店にやっとの思いで辿り着け

たエピソードを少しお話しさせて頂きました。

皆さんにもそのような店は存在しますか? ある

のでしたら、是非今度聞かせてください。

では、また、。

バー スターダスト