月別アーカイブ: 2019年1月

イエローサテン。

こんにちは、バーシエールの岡本で

す。今回は、昨年の10月から開催さ

れているフェルメール展のお話を少

し。ご周知の通り、寡作の画家として

有名なフェルメールですが、日本での

人気が高まったのは、ここ20年ほど

だと記憶しています。今回はフェルメ

ールだけで9点展示されていますの

で、これは2008年に開催されたフ

ェル メール展での、7点を上回る展示

数ですね。震災以降、激減していた関

東エリアでの展覧会ですが、解禁であ

ることを示すような盛況ぶりです。今

後が楽しみですね。昨年から今年に

かけて作品が1点加わったため、私に

とっては10月に引き続き、2回目の

展覧会となりました。

さて、フェルメールといえば、ラピス

ラズリ鉱石の青。フェルメールブルー

などと世間では呼ばれていますね。

真珠の耳飾りの少女や、牛乳を注ぐ

女がその代表作といえます。このラピ

スラズリ。日本では瑠璃と呼称される

この青い石は、古くから顔料や装飾品

として親しまれてきました。その深い

青色は、フェルメールの作品にも多く

使われており、見るものを魅了しま

す。フェルメールといえば、ラピスラ

ズリ。という概念はほぼ定着していま

すが、無論、それだけではありませ

ん。今回の展覧会でも取り沙汰されて

いますが、作者の好みや、その当時の

流行が、わかりやすく作品に反映され

ています。写真にもある通り、それが

イエローサテンの上着です。写真では

今回の展覧会に出展されている作品

3点のみ掲載しましたが、他に3点

、計6点にこのイエローサテンは登場

します。35作品ほどしかない作品の

うちの6点ですから、約6分の1の

割合を占めることになります。余程

気に入っていたのか、流行に敏感で

あったのか、あるいはまた、これしか

用意できなかったのか。憶測は尽きま

せんが、同展覧会にて、フェルメール

に影響を受けたというハブリエル・メ

ツーの作品2点にもこの上着は登場し

ています。作品や作者を跨いでの着ま

わしともなると、かなりの流行服であ

ったのかもしれませんね。上着自体の

描写は素晴らしく、滑らかなサテンの

光沢を上品に映し出しています。

これは牛乳を注ぐ女になりますが、モ

デルの着衣している胴着はイエローサ

テンとほぼ同じ色になります。です

が、明らかに質感が異なり、硬くごわ

ついてみえます。一目見てわかるほど

の、同じ色を使いながらも質感をまっ

たく変えてしまう技術。この辺りもま

た、多くの画家たちの面目躍如となっ

て人々を惹きつけるのでしょうね。こ

の場合、イエローサテンを身に纏う裕

福な家庭に育つ少女と、その使用人で

ある牛乳を注ぐ女という仮の設定も想

像してしまいます。光沢の差異と貧富

の差異に因果関係をもたせた寓意とい

ったところでしょうか。

さんざっぱら語っておきながら、

私、絵画の造詣はたいして深くあり

ません。好きなものをみて、好きな

ように感じているだけですね。これは

酒の世界でもいえますが、趣味嗜好は

人それぞれ。どこまで踏み込むのかは

その人次第です。ただ、時折、知らな

い世界への扉を開けてみるのも悪くは

ないと、私は思います。

では、また。

 

フェルメール展の情報はこちら。

https://www.vermeer.jp

ながいもの。

新年明けましておめでとう

ございます。シエールの岡本です。

本年もよろしくお願いいたします。

さて、新年早々、1月3日に、

わたくし映画を観て参りました。

『YUKIGUNI 』というドキュメンタリ

ーの映画です。ご存知の方もおられる

かと思いますが、古いスタンダード

カクテルに雪国というカクテルが

あります。このカクテルを考案した

バーテンダーが、井山計一氏。日本

最高齢、現役で御年92歳の大ベテラ

ンです。1958年にこのカクテルで

壽屋(現在のサントリー)のカクテル

コンペ1位に入選しました。映画のタ

イトルのとおり、この映画は雪国とい

うカクテルを中心に、井山計一氏の半

生を描いたドキュメンタリーとなって

おります。何でしょう、私、この仕事

を長く続けている自覚があるようでな

いのか、あまり長さに関わる文言が胸

に響かないんですよね。本来ならこの

手の映画やドラマなどは見送るのが通

例ですが、私もカウンターに立つよう

になってから26年目に入ろうと

しています。短くはないこの時間がき

っと食指を動かせたのだとも思います

が、素直に足が向きました。劇中は胸

が熱くなりましたね。バーテンダーも

人の子。人並みの生活を営む上での苦

労はもう身をもって体験していますの

で、自己を投影させたり、古き良き

時代に思いを馳せてみたりの連続でし

た。「勉強しないとバーテンダーはつ

まらない」まったくその通りだと私も

思います。酒を提供するだけが我々

の仕事ではありません。その都度

酒の触媒になってこそ成り立つのでは

ないでしょうか。

私はこの仕事に高邁な理想論など

持ち合わせていません。むしろ凡庸で

あることに努め、時代と、その中に生

きる人々を傍らで見守る目でありたい

。そう願うばかりです。

長く続けていくということ。それは、

己と向き合い、人と向き合うことで

紡いでいく、自己研鑽の賜であると

私は思います。

では、また。

 

映画の情報はこちら。

http://yuki-guni.jp/