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アルケミエ。

皆さんこんにちは、パーシエールの岡本です。

今回はアブサンという酒について少しお話します。

アブサンという言葉の響きは、日本では水島新司

さんの野球漫画『あぶさん』で耳に馴染んでいると

思います。実は、あぶさんの名前の由来はこの酒に

起因しています。原作者の水島さんは大の酒好き。

主人公である景浦安武、通称あぶさんが酒豪の強打

者という設定もあり、世界で最も強い酒の一つであ

るアブサンを作品名にしたとの事。私、原作をよく

知りませんが、アブサンの名を冠する主人公なん

て、ちょっと洒落てますよね。きっとイカれてる

んでしょうけど 笑

まあ、余談はさておき、アブサンという酒は

とにかくアルコール度数が高いです。蒸留法で

生成するリキュールなのですが、50度、60度は

当たり前。70度、80度、果ては90度という

高アルコール度数を誇ったアブサンも存在します。

 

● そもそもどの国の酒なのか。

 

アブサン発祥の地はスイスといわれています。

そこから波及するようにヨーロッパ全土に広がって

いきました。18世紀中頃、その当時では高アルコ

ール度数で安価なアブサンは貴重だったと思われま

す。現代では高名な偉人や芸術家など、まだまだ実

入りの少なかった時分に、少量で酔えるこの酒は魔

法の酒であったでしょうね。ピカソ、ゴーギャン、

ゴッホ、数え上げればきりがありませんが、数多く

の芸術家たちが魅了されました。

 

● どんな味の酒なのか。

 

アブサンの主原料はにニガヨモギというヨモギの一

種で、これとハーブ類を多数調合し、蒸留して生成

されます。一言では言い尽くせない複雑な味わいで

すが、昔から、初めて口にしたお客様は歯磨き粉の

よう、という感想が多いですね。確かにミント類の

ハーブも含まれているのでミントの存在感は大きい

です。そこに爽やかな甘みとニガヨモギの苦み、

そして高アルコール度数の刺激。これはあれです。

イカれた酒ですね。個人的ではありますが、右脳を

程よく刺激してくれます。大人の情操教育の為の、

右脳トレーニング飲料です。著名な芸術家たちが

軒並み虜になっていく理由がわかる気がしますよ。

 

● 製造・販売中止。

 

アブサンの主原料であるニガヨモギにはツヨンとい

う成分が含まれており、このツヨンを乱用すると、

幻覚症状や錯乱状態を引き起こすものとして毒成分

が認められ、19世紀後半から20世紀初頭にかけ

て、ヨーロッパ本土では製造販売が禁止され

ました。その後、20世紀後半にはツヨンの残存容

量を抑える事で解禁となるわけですが、この時、ア

ルコール度数の規制は設けられていません。確かに

ツヨンには毒成分があったのでしょうが、正直、

70度も80度もある酒を常用摂取していれば、

幻覚、錯乱状態を引き起こすのは至極当然かと思わ

れます。もうこれくらいのアルコール度数になって

きますと、味云々ではなくなってくるので、日本で

は特に罰ゲーム要素が強まってしまいます。まあ、

個性がある酒は薦めやすいですけどね。ただ、

テキーラなどとは次元が違います。ストレートで

一気飲みなんて事は控えましょう。あっという間に

昏倒騒動ですよ。それと錯乱状態では、ゴッホが自

身の耳たぶを切り落としたという話が有名ですよ

ね。これはアブサンとの因果関係など、真偽の程は

わかりませんが、どうしたんでしょうね、ゴッホさ

ん。痛いですよね。絶対にやめましょう。

 

●   アブサンの飲み方。

 

では、アブサンはどうやって飲めば良いので

しょう。もちろん、節度をもってすれば、

ストレートで召し上がっていただいても構いませ

ん。味や香りを楽しむのに一番わかりやすいのは

ストレートですし、氷も入っていないので薄まりま

せん。ですが前述の通り、アルコール度数は人を選

びます。無理をせず、もっとポピュラーな飲み方を

選ぶのであれば、水割り一択になるかと思います。

炭酸などでも悪くはありませんが、アブサン特有の

爽やかな甘みが感じとりにくくなってしまいます。

こちらは形だけですが、このように専用のスプーン

に角砂糖を一つ。グラスに氷を詰めて、アブサンを

少しずつ角砂糖を通してドリップしていきます。

適量を注ぎ終えたら、スプーンの先をグラスに

落とし、水を加えて静かにステアして出来上がり。

香りをより強くする為に、パフォーマンスとして

アブサンでひたひたになった角砂糖に火を付けて

目で楽しむ作り方も存在します。是非、バーテンダ

ーに声を掛けて試してみてください。もちろん、

通常の作り方でも問題はありません。それと

もう一つ。アブサンを楽しむ上で欠かせないのが

白濁です。この現象は銘柄によってかなりの差異が

生じるので、すべてのアブサンが白濁するとは限ら

ないのですが、基本、無色のアブサンは白濁しま

す。これは、希釈する事で非水溶成分が析出して起

こる現象で、ストレートで飲み続けた場合、確認

出来ませんので、チェイサーなどをもらい、自身で

試してみるのも一興です。まるでコンデンスミルク

のように変色しますので、楽しいですよ。

 

●   辰巳蒸留所。

 

冒頭の画像やタイトルにもある通り、今回は

アルケミエという日本のアブサンのご紹介です。

辰巳蒸留所という場所で造っています。岐阜県の

郡上八幡。日本名水100選に選ばれている土地に

所在し、2017年の7月に開業いたしました。

酒造りは一人で行っています。東京農大で醸造学を

専攻し、国内外のメーカーやワイナリーを渡り歩き

、単身蒸留所を立ち上げました、辰巳翔平氏。彼の

努力の結晶がこのアルケミエになります。

実はこのブログ。昨年書きかけていたもので、画像

のアブサンはアルケミエの2年目の品で、言わば

セカンドシーズン。昨年の製品になります。非常に

出来が良く。お客様にもかなり気に入っていただけ

たので、早く書き上げてご紹介したかったのです

が、アップロードする前にものが無くなってしま

い、再入荷も期待できなかった為、次回作へと

繰り越しました。なにぶん一人で製造しているので

ロット数は少なく、ボトルも容量が500ml とな

っており、あっという間に在庫が底をつくというの

が現状です。ですが、今年また、辰巳蒸留所の新作

を仕入れる事が出来ましたのでご紹介させていただ

きます。

今回はジンになります。元々ファーストシーズン

からジンとアブサンを並行して製造しておりますの

で、3年目はジンのみリリースされた形となりまし

た。ただし、ジンの植物性成分。所謂、ボタニカル

の中で最も特徴的なジュニパーベリーより、

アブサンの主原料である、ニガヨモギが優っている

ジンとなっています。かなり苦味がありますね。

柑橘を思わせる爽やかなフレーバーを感じ、着色料

ではない天然の緑が強く印象に残ります。そして、

それぞれの副材料がバランスよく複雑に絡み合い、

今回もまた手作り感満載の一品となっております。

そもそも、緑色のジンなど見たことありませんよ

ね。まさにアブサンとジンの混血種。日本が生んだ

ニューウェーブではないでしょうか。是非お試し

あれ、と言いたいところですが、なにぶん杯数の方

が限られておりますので、ご用意出来るかはわかり

ません。間に合わなかった方は、来年に期待しま

しょう。しかしこれもまた、本物志向の醍醐味

ではないでしょうか。皆さんも右脳の脳トレしてみ

ませんか 笑

では、また、、