月別アーカイブ: 2020年7月

ブルイックラディと読みます。

 

「ブルイックラディックください」

「はい、ブルイックラディですね」

「ん? いや、ブルイックラディック」

「いや、ですからブルイックラディ」

「じ、じゃあ、それで」

「かしこまりました」

❇︎

皆さんこんにちは、バーシエールの岡本です。

梅雨に入り、大雨警報があったと思えば、

翌日には真夏日になるという凄まじい振り幅

で天気が移り変わっています。体調が崩れて

しまいがちですよね。気をつけましょう。

さて、今回はブルイックラディという、スコッ

チシングルモルトウイスキーについて少しお話

ししていきます。

こちらはオールドボトルになりますが、私が

好きだった頃のブルイックラディですね。

25年ほど前までは飲めていたはずです。

これはブルイックラディに限らずですが、

この頃までは、シングルモルトウイスキーと

いえば、まずはオフィシャル。飽きたらボト

ラーズと。あとはそれぞれの熟成年数で好み

の品を探すといった流れで、カスクストレン

グスや他の酒の廃樽で寝かせた物は、主に

ボトラーズ会社の仕事で、オフィシャルの

銘柄は現在より極端に少なかった印象です。

そして現在ではウイスキー蒸留所も時代と

共に多様化を図り、様々な種類のオフィシャル

ボトルが存在します。画像のブルイックラディ

は10年熟成のオフィシャルボトルですね。

ブルイックラディは英国スコットランド領の

アイラ島という島で生産されています。この

島では、ラフロイグやアードベッグなど、

非常に個性の強いウイスキーを世に送り出し

おり、アイラモルトなどと呼称され、人々に

親しまれています。しかし、この個性の強い

モルトウイスキーばかりを生産しているアイラ

島の中でも、ブルイックラディは非常に大人

しく、穏やかなモルトウイスキーを作り出し

ています。謂わば、個性に抗う個性ですね。

シングルモルトウイスキーの個性といえば

ピートですが、これは、泥と植物を練り混ぜ

て熟成させた、薫製で使うスモークチップの

様な物で。蒸留する際にこのピートで炙ります。

この作業によって、モルトウイスキー特有のス

モーキーフレーバーが生まれるのです。ところ

が、数あるシングルモルトウイスキーの中で、

このピートを極力抑えて、ノンピートとして

売り出しているシングルモルトウイスキーが

いくつか存在します。マッカランやグレンゴ

インなどが有名ですが、ブルイックラディも

その中の一つで、まさに逆ブランド志向の始祖

と云えるでしょう。

こちらの画像では、ブルイックラディの綴り

にご注目して頂きたいのですが、冒頭の寸劇

の様に、英語読みすればブルイックラディック

と読めてしまうので、そのように覚えてしまう

お客様が非常に多いですね。私も駆け出しの頃、

まだこの酒が机上の知識でしかなかったので、

間違って覚えてしまいました。ですが最早、

インターネット上ではブルイックラディック

で何の問題もなく検索出来てしまいます。

このスペルと発音のちょっとした違いは、

スコットランドの公用言語に起因します。

イギリスといえば英語ですが、実は純然たる

英語を使っているのはイングランドだけなの

です。ご周知のように、イギリスは4つの国

から成る連合国家ですから、言語に違いが

あっても不思議ではありませんよね。スコッ

トランドの公用言語はスコットランド語と、

ケルト民族由来のゲール語という言語になり

ます。シングルモルトウイスキーの銘柄は全て

このゲール語で表記されているので、スペルや

発音にちょっとした違いが生じるという訳です。

これらの事から、スコッチのシングルモルト

ウイスキーは聞き慣れない言葉が多いです。

覚え難いのですが、なるべくネイティブに

覚えてあげましょう。意味合いとしては、

どれもその土地の景観や形状を表している

事が多いです。因みにブルイックラディとは、

『盛り上がった砂浜』という意味があります。

こちらは現在のブルイックラディ。

クラシックラディという、オフィシャルの

ボトルですね。

途中、こんな感じになった事もありました。

ここまでは許せた 笑

とにかく、2000年代に入ってからの

ブルイックラディは自由奔放で好き放題な

イメージですね。スコッチウイスキーの歴史

ある格式から脱却を図っている節があります。

少し青をチラつかせた頃はまだ我慢出来まし

たが、完全に青に染めたボトルを目の当たり

にした時、私の中のブルイックラディが一つ

終わりを迎えたのは覚えています。好きな

車がフルモデルチェンジをして、それが

全く胸に刺さらなかった時と同じような、

そんな切なさが胸を強く締め付けました。

え、リキュールなの、これ。みたいな 笑

ボトル棚でも浮きますよ、そりゃ。シングル

モルトウイスキーでは唯一無二のボトルデザ

インですからね。ただ、アイキャッチとしては

秀逸なので、置いてはいましたけど。

肝心の中身の方ですが、私が好きだった頃の

ブルイックラディを踏襲しているのは、どちら

かというとこちらでした。

ブルイックラディのアイレイバーレイです。

そして、現在のアイレイバーレイがこちら。

美味しいですよ、これ。昔と比べると

少し潮気が強く、アルコール度数が50%と

やや高めなので辛く感じますが、元々あった

ブルイックラディの特徴である青リンゴの

様な爽やかな香りとアイラモルト特有の

潮気とのバランスが絶妙です。ああ、戻って

きたと。そう感じさせてくれた一本でした。

ボトルがまた極端に地味ですけど、中身が

華やかなので問題ありません。青よりはマシ

笑 どんどん勧めていきますね。ワンショット

1200円での提供です。

さて、この辺で2000年代からのブル

イックラディのもう一つの顔である。

個性強めのブルイックラディをご紹介

致します。画像の酒は、ポートシャーロット

の8年。カスクストレングスになっています

ので、アルコール度数は60・5度と高め。

ブルイックラディ蒸留所で生産されており

ますが、全く異なった個性を持っており、

ピートも強めに炊いていますので、スモーキー

ではあります。ただ、原酒はブルイックラディ

という事もあり、エレガントな部分を残した

まま、ピートが主張しており、複雑な味わい

となっています。同じアイラ島では最高峰に

切れ味の良い、アードベッグなどと比べますと

やはり大人しく感じるはずです。そして更に、

ブルイックラディの裏の裏の顔と申しま

しょうか。ポートシャーロットとはほぼ同時期

になりますが、ファーストリリースは確か

2007年か8年だったと記憶しています。

こちらの銘柄のご紹介。

名はオクトモアといいます。化物級のスモー

キーフレーバーを有し、およそウイスキーの

範疇ではないアルコール度数を誇り、

一度見たら忘れないこのボトルのフォルム。

世界を震撼させたブルイックラディのリーサル

ウエポン。それがオクトモアです。もう一度

言います。それがオクトモアです。と、まあ、

派手に書き連ねましたが、もはや兵器と呼ば

ざるを得ない、強烈な個性を持ち合わせた

シングルモルトウイスキー。それがオクトモア

です 笑 しつこいですね。

当時バーでは流行っていたはずなので、ご存知

の方も多いのではないでしょうか。画像のオク

トモアは3rdリリースの品で、シャトー・

ペトリュスという、フランスボルドー地区の

赤ワインの樽で寝かせたシングルモルトウイ

スキーになります。1stも2ndも取っておいた

つもりだったのですが、見当たらなかったので、

こちらだけ。フェノール値は140ppm 。フェ

ノール値というのは、フェノールという芳香族

化合物の含有率を示す値で、ppm(百万分率)

で表します。簡単にいえば匂いの強さを数値化

したものですね。このフェノール値をピック

アップしてボトルに記載したのは、後にも先に

もこのオクトモアだけではないでしょうか。

ラフロイグやアードベッグなどは、およそ

40ppm 〜50ppm になります。比較対象の

存在でオクトモアがどれだけ香りが強いのかが

お分かり頂けたかと思います。口に含めば体中

にピートが蔓延し、もれなく薫製になった気分

にさせてくれます 笑 そしてこれはどのオク

トモアにもいえる事ですが、カスクストレン

グスによってアルコール度数も高く、フェノー

ル値は化物級で色物扱いされがちな銘柄です

けれど、そこはやはりブルイックラディ。高濃縮

された酒の中には、繊細さが具に窺えます。

じっくりと抜けを楽しみ、ゆっくりと余韻に

浸って頂きたい。珠玉のシングルモルトウイス

キーです。

そして現在のオクトモアがこちら。ボトルの

形状など、特に変わった点は見当たりません

ね。現時点ではシーズン10まできました。

10シリーズもリリースされてから少し時間が

経ちましたが、気まぐれで入荷致しました。

何年ぶりでしょう、オクトモアを入荷したのは。

10年経っているかもしれません。まあ、

そこには理由がありまして。有り体に言えば、

爆発的に人気を得た事もあり、お値段が跳ね

上がってしまい、お客様に提供し難くなって

しまった事と、時間の経過と共にクオリティ

が上がっていくのは当然なのですが、フェノ

ール値がどんどん上がっていく様が、まるで

マラソンの記録でも伸ばしているかの様に

見えてしまい、滑稽に思えてしまったのです。

何でしょう。少年ジャンプの漫画みたいに

見えましたね 笑

そして今、オクトモアもシーズン10まで

きましたが、ここ近年はフェノール値も

落ち着き、100ppm 〜150ppm あたりを

行き来しています。いっときは250ppm を

越えていましたからね 笑

今回、気まぐれで入荷したオクトモアは、

10・1のスコティッシュバーレイ。フェノ

ール値は107ppm でアルコール度数は

59・8% 。まあ、オクトモアの中では可愛い

ものです。ワンショット2200円での提供

です。お早めにどうぞ。

皆さん如何でしたでしょうか、今回はブルイッ

クラディ蒸留所で作られている三つのブランド

をほんの一部ではありますがご紹介させて頂き

ました。続きは当店にてお話させて下さい。

では、また、、

2001年宇宙の旅に登場するモノリスです。

オクトモアに似ていませんか?

飲めば進化出来るかもしれません 笑

ツァラトゥストラはかく語りき