そろそろ触れてみる① いいちこポスター。


 

皆さんこんにちは、バーシエールの岡本です。

季節の変わり目。寒かったり暑かったり、

空模様も移ろいやすい時期に差し掛かりました。

ここから年末まであっという間ですからね。

世の中に置いていかれないように気が急って

いる今日この頃です。今回はコロナ禍が

本格化を迎える前に書き掛けていたブログ

の中からチョイスして上げていきます。

 

さて、皆さんは駅のコンコースなどでこの

ようなポスターをご覧になった事があるで

しょうか。

そう。下町のナポレオンこと、麦焼酎いいちこの

広告ポスターです。大衆居酒屋などではお馴染み

となったこちらの銘柄は、大分県の酒造メーカー。

三和酒類株式会社の主力商品で、1979年から

販売している古参の麦焼酎です。私も居酒屋など

では随分とお世話になりました。老若男女問わず

、国民的な酒の一つではないでしょうか。

酒が売れる理由は大きく分けて三つ。まず第一に

品質。これは酒に限りませんね。安かろうが高かろ

うが消費者はまずここを求めます。第二に価格。

これは品質と密接していますが、安ければいいと

いう問題でもないのですよ。払って満足の人種も

多くおられるので。そして第三にして、最も大切

な要素は広告です。

酒は皆さんご承知の通り嗜好品です。一部の方を

除いては、摂取しなければ生きていけないという

訳ではありません。だからこそ、秀逸な広告が

活きてくるのです。飲酒意欲をひたすら掻き立て

る広告もあれば、抽象的に商品を引き立てる

ものもあります。今回触れたいいちこの広告は

後者に当たりますね。

こちらは1984年に駅構内に初めて貼り

出された広告です。ストーリーではなく、

ストーリィなんですよね。なんか良い 笑

アンティーク調のテーブルに洋風なグラス

や調度品が絶妙な位置間隔で飾られ、中央に

はいいちこ本体。脇から照らすスタンドの

ネック部分がとても綺麗に湾曲していて、

この作品全体のバランスを上品にまとめてい

ます。そして何より、いいちこポスターと

いえば繊細な文言と美しい写実的な画像と

の融合です。この作品の場合、広告の世の

中だけど、というのは、まさに当時の世の

中で、噂で飲まれる酒がある、というのは、

この企画の当初からのコンセプトで、営業

活動を一切してこなかった三和酒類と、

この企画を全権任されたアートディレクタ

ー。河北秀也氏によるイメージ戦略で、

広告をするのではなく、デザインするとい

う信念に掛けてある文言かと思われます。

こちらは初作品なので、かなり具体的に

表現されていますが、これより先、現在に

至るまで、文言は驚くほど広告の意思が

無く、いいちこを探せと揶揄されるほどに、

いいちこ本体が小さく、画像の中から見分け

にくくなっており、その作風はみるみるうち

に抽象化を極めていきます。

これら4つの作品は、春夏秋冬で且つ、

いいちこを探せに該当する作品を選んでいます。

この回の終わりに答えを載せておきますので

擬態化したいいちこを探してみてください 笑

今回はいいちこポスターをフィーチャーして

おりますのであまり触れませんが、いいちこ

のテレビCMもまた歴史が長く、関わった

アーティストや芸能人も強く印象に残っています。

ビリーバンバンに坂本冬美さん。最近では

ゴールデンボンバーやムロツヨシさんなども

出演していますね。特にビリーバンバンの、

また君に恋してるは、坂本冬美さんがカバー

して大ヒットを記録しましたね。これらの

テレビCMもポスターと同様に、アートディレ

クターである河北秀也さんが手掛けています。

作品のコンセプトや世界観などは基本的に

ポスターと変わりません。ただ、ここ最近はもう

ポスターと比べて時宜に適ったキャスティング

や時事ネタが多いように思われますので、私は

昔からスタンスを変えないポスターの方が圧倒的

に好みではあります。YouTube などで鑑賞できます

ので、興味のある方はご覧になってみてもいいかも

しれません。どれも趣があって胸に沁みますよ。

いいちこテレビCM

さて、最後は私のお気に入りの作品を2点

ご紹介させていただきます。ポスターは毎年、

月毎に変わっていくのですが、この2点は

4月と8月の作品だったかと思います。上の

作品はもう、見たままですね 笑 桜にいいちこ

が舞っています。この作品。珍しくいいちこが

3本も写っています。そしてどれも開栓してある

ので、花見の季節の大宴会を連想させますよね。

3本も空けてやったみたいな 笑 まあ、これは

これで良いのですが、個人的には開栓していない

状態で舞って欲しかった 笑 桜に舞ういいちこ

がよりフレッシュに見栄えし、ポップな作品に

仕上がったであろうと容易に想像出来るからです。

開栓してあると、大トラどもの乱暴な振る舞いを

思い浮かべてしまうし、放り投げた時の掛け声まで

もが聞こえてきそうなのです 笑 まあ、こちら

の作品は1986年4月の作品ですから、バブル

真っ只中という時代背景があるし、景気が良さそう

というだけではなく、ギリギリのところで舞って

いる3本にピントを合わせてある技術に感服した

ので、気に入ってはいますけれどもね。色合いも

鮮やかですし。

そして下の作品は8月の作品です。荊(いばら)

の寓話とありますね。まず寓話とは、主に教訓を

他の事柄から例える物語のようなもので、イソップ

物語や、日本でいうところの日本昔ばなしが

これに当たるでしょう。荊とは棘のある小木の

総称になりますが、荊の寓話となると、苦難に

満ちたストーリーしか見えてこないですよね 笑

こちらの作品は2017年8月の作品です。

アートディレクターである河北さんは、時折

社会風刺を作品に反映させるので、2017年

夏頃の世の中の動きが気になりますが、そこが

わかったところでこの作品に対する私の印象は

大して変わる事はないでしょう。とにかく、時代

なんですよねぇ、、。嬉しい楽しいだけで飲食

する時代ではないのです。人々はコストパフォ

ーマンスを求め、常に財布と相談。ブラック

企業だのパワハラだの、時代の互換性がうまく

図れていない現世の仕組み。この作品は、そんな

現実めいた厳しさを喚起させられる一作ですね。

この荊の風景の渇き具合がまた、より一層、

寂寥を駆り立てます。ハッピーエンドの映画だけ

観ていても頭がすっからかんになるだけです。

時には現実と向き合い、シリアスな映画を観る

事で見えてくるビジョンがある。涙を流す事で

癒されるカタルシスもある。荊であろうが薔薇

色であろうが時間だけは平等に流れます。

このサボテンはそれでも生きているのです。

強さって一体なんだろう。私にとってそう思わ

せてくれる作品ですね。

さて、今回はそろそろ触れてみるをシリーズ化

してみようと試みましたが、次回があるかは

わかりません 笑 皆さんも是非、いいちこ

ポスターの魅力に触れてみてください。

では、また、、

いいちこポスター

いいちこを探せ。

文言のあたりに配置されているとわかりやすい

ですね 笑

今年の8、9、10月の作品ですね。

コロナ禍で休業中、気持ちを穏やかに

してくれました。是非、出来るところまで

続けて欲しいものです。