ガヴディとサグラダ・ファミリア展。


皆さんこんにちは、バーシエールの岡本です。

蒸し暑いですねぇ。炎天下でなくとも熱中症には

注意しましょう。

さて、タイトルにもある通り、未完の世界遺産。

サグラダ・ファミリアの展覧会が、6月13日〜

9月10日まで東京国立近代美術館にて開催中

でございます。私の記憶が確かなら、2010年

11月。ローマ法王ベネディクト16世がサグラ

ダ・ファミリアを訪れて聖別ミサを行い、バシ

リカとなったことで、それまで急いでいた工事に

より拍車が掛かり、完成まで300年は掛かる

といわれていた工事にようやく終わりが見え始め

たというのがこの頃であったと思います。当時

一建築士として設計事務所に勤めていたお客様

と盛り上がった覚えがありますね。この方は会社

の旅行でサグラダ・ファミリアを訪れた経験が

あったので、その旅行の話を興味津々とばかり

に聞き入っておりました。

展覧会には私、先んじてお邪魔して参りましたが、

あまりにも混雑していたので時間が押してしまい

、完全には廻ることが出来ませんでした(どこか

でもう一度行きます)そこで今回は、多少の展覧

会の様子を交えながら、これまでのサグラダ・

ファミリアの歴史をかいつまんでお話しさせて

頂きます。

皆さんご存知でしたか。サグラダ・ファミリア

教会は着工してから約140年もの時間が経過

しているのです。「神はお急ぎでない」という

名言を残し、1926年。初代建設家フラン

シスコ・ビリャールからバトンを受け取り、その

建設に身命を賭したアントニ・ガヴディはこの世

を去りました。ですが、目下ガヴディの没後

100年である、2026年に完成といういち

おうの目処が立っております。

サグラダ・ファミリアとは聖家族教会という意味

を持ち、イエス・キリスト、養父ヨセフ、聖母

マリアに捧げられたキリスト教の聖堂です。幾つ

もの鐘塔がまるで剣山のようにそびえ立っている

その一つ一つには、聖家族というだけあって

イエス・キリストとゆかりのある縁者の名前が

付けられています。聖母マリア、福音書作家、

12使徒と、完成すればその数なんと18本。

2023年6月現在。未完の塔は中央の最も

高層であるイエス・キリストの塔を含めて残り

6本ほどかと思われますが、これをあと3年で

、、ですか。んー、、笑

茶色の部分が未完です。まあ、コロナ禍も挟み

ましたから、間に合わないとは言われています

けれどね 笑 それでもガヴディが亡くなった

100年前よりは格段に捗っているかと思います。

もちろん時代が違うので、テクノロジーの発達に

よる圧倒的な処理数の差異はあります。しかし、

問題はそこではなく、彼の死因に関わってくるの

です。ガヴディは不慮の事故で唐突に亡くなって

おりますので、バックアップといいますか。それ

がなかったのです。もちろん当初は膨大な数の

設計図や模型は存在していたのですが、ガヴディ

が着工してまもなく、スペインの内戦による戦火

でその大半を焼失していたのです。そしてガヴディ

の突然の死。何の引き継ぎもないまま、一度は

建設中止になりながらも、7年後。民衆の強い

想いに背中を押され、工事再開にまで漕ぎ着け

ました。しかし、残されていたのは1枚のスケッ

チと僅かな実験模型のみ。コンピューターなど

無い時代の引き継ぎですからねぇ。後継者であっ

た建築家たちの気苦労はいかばかりであったかと。

素人目からみても、苦行であったことは明らか

ですよね 笑

しかし、これだけ長い工期の建造物だと、膨大で

あると予想される建築費用の資金繰りが気になり

ませんか。国や、教会が所在しているバルセロナ

市ではないのかと思われがちなのですが、実は

違います。サグラダ・ファミリアの正式名称は、

聖家族贖罪教会となるのですが、この贖罪教会と

いうのが宗教的な理念に基づく名称で、信者の

寄付金だけで賄い竣工された教会にはこの名称

が与えられるようですね。神に赦しを請う立場

である人間は、金策にも励まねばならないと。

まあ、つまりはお布施のような考え方になるで

しょうか。それを贖罪と呼ぶのです。この戒律の

おかげで何度も資金難に陥り、工事が中断されて

きたのです。ところが、2005年。サグラダ・

ファミリアにとって大きな変化が訪れました。

ガヴディの作品群として、その一部がユネスコの

世界文化遺産に登録されたのです。サグラダ・

ファミリア全体ではないのが残念でしたが、

何せ未完ですからね。多くは求められません 笑

登録されたのは2箇所。生誕のファサード(暫定

的な正面玄関)と、地下礼拝堂です。

こちらが生誕のファサード。

そしてこちらが地下礼拝堂になります。

この登録により、サグラダ・ファミリアは世界随

一の観光地となったのです。サグラダ・ファミリ

アの拝観料が贖罪に値するのか甚だ疑問ではあり

ますが、財政状況はかなり安定しました。これ

より先。工事は急ピッチで進められていくこと

になります。

現在。サグラダ・ファミリアの主任彫刻家は日本

人の彫刻家。外尾悦郎氏が務めておられます。

上の画像は世界文化遺産にも登録されている

サグラダ・ファミリアの顔である生誕のファサー

ドの門扉になります。この美しい門扉をデザイン

、制作されたのが外尾悦郎氏。サグラダ・ファミ

リアには現在、建築家、彫刻家も含めて約200

名ほどが勤めておりますが、外尾さんはこの中で

一番の古株です。1978年。齢25でバルセ

ロナに渡り、それから45年間ガヴディの声を

聞き続けているのです。扱いとしては永遠の

契約社員とご自身がそう表現なさっています。

教会側が作品を気に入らなければ即解雇。結果が

全てというのはどの世界でも共通していますが、

あまりにも厳しい現実。外尾さんは仕事を請け

負うたびに、これが最後の仕事だと肝に銘じて

臨んでいたそうです。その極限の集中力が、数々

の奇跡を生み、研ぎ澄まされた作風を顕現なさっ

てこられたのでしょうね。私、外尾さんの講演会

の動画などいくつか拝見させて頂いておりますが、

朗らかでユーモアがあり、お人柄がよくわかりま

す。とても素敵な方ですよ。彫刻を石を掘ると

表現なさっていて、サグラダ・ファミリアには

自分探しで来てみたというようなニュアンスの

お話しをしていたのが印象的でした。そうです

よね。当時は25歳ですから。お年頃ですもの

ね 笑 それが一生物の仕事にめぐり逢えたわけ

ですから、まして今や世界的に権威のある立場に

おられる。月並みですが日本の誇りです 笑

こういった成功例に触れると、人生において

自分探しの旅は、けっして恥ずかしかったり

無駄なことではないのかもしれないと、そう思え

てきますよね。考えるよりまず動く。失敗しても、

その経験は青春の1ページとなり、後々いい酒

の肴となって返ってきます 笑

さて、今回は完成予定まであと3年と迫った

サグラダ・ファミリアの展覧会に足を運んだ

ことをきっかけに、簡単ではありますが、その

歴史を振り返ってみました。

「神はお急ぎでない」そう彼は言い残しましたが、

神とは人の心が創り出した偶像だと私は考えま

す。人の心が神ならば、もう少し急いでも構わ

ないとそう願っているはずです。終わらない、

急がないこともまた美徳であり、尊い。もはや

終わらせる意味さえあるのかどうか疑わしいの

ですが、率直に言わせてもらうと、早く見たい。

ただそれだけなのですよね 笑 完成した暁に

は私も現地に赴く所存です。その場合、一週間

ほどお暇を頂きたく存じます 笑

では、また、、

こちらは地下礼拝堂の脇にひっそりと佇む

ガヴディの墓です。いつものように仕事が終わり、

サグラダ・ファミリアからミサに向かう途中、

縁石につまづいて転んでしまい、運悪くそのまま

偶然通り掛かった路面電車に轢かれてしまった

ガヴディ。発見時。身なりがあまりに酷かったた

め、ガヴディであると気が付かれず、3日間

放置された挙句、帰らぬ人となりました。何とも

形容し難い死に様ですが、時間が経ち。今では

こうして工事の進捗状況を静かに見守っています。