皆さんこんにちは、バーシエールの岡本です。
さて、今回は当ブログでも一度取り上げた
ことのある『ハートカクテル』の原作者。
わたせせいぞうさんの50周年記念わたせ
せいぞう展に先日お邪魔してまいりました
ので、その様子をお話しします。
池袋東武百貨店の8階。催事場の特設
ブースにて、2月6日からバレンタインデー
の前日13日まで開催しておりました。バレ
ンタインのチョコレートイベントと隣接させ
てあるあたり。やはり誰もが認めるラブスト
ーリーのスペシャリスト。ただ、この二つの
ブースは年齢層の幅が一目瞭然でしたが 笑
わたせさんは小説家の村上春樹さんと同大学、
そしてほぼ同年代です。村上さんも変わりま
せんが、70代でバレンタインイベントとの
コラボレーションが出来るというのは、
側から見れば羨ましさ半分と、気恥ずか
しさ半分という印象です 笑 コロナ禍
を機に、わたせせいぞうチャンネルという
Youtube での配信が始まり、冒頭ご本人から
の挨拶と、その後は『ワンダーカクテル』と
いう配信番組がスタートしました。今回の
個展は代表作である『ハートカクテル』を
はじめ、東京の風景やさまざまな企業との
コラボレーション作品も取り揃えておりま
した。懐かしいものから目新しいものまで
、中々の見応えでした。
わたせさんといえば、スクーターは
お馴染みのヴェスピーノ(ヴェスパ)。
作中に多く登場するアイコニックな
存在としてしっかり置いてありました 笑
そして車はポルシェ356ですよね。
本物より美しい 笑 わたせさんが描く
主人公たちが乗ると更に引き立ちます。
どちらも基本、カラーはレッドですが、
ヴェスピーノは特にカラーが豊富ですから、
その都度作品の表情が変わるので楽しめます
。50周年のイラストはイエローですね。
パステルのイエローもまた捨て難いですね。
実は、『ハートカクテル』はいまだに
続いています。2024年には『ハート
カクテル カラフル』を出版。(アニメ
ーションは先行して23年にNHKで
放送)もちろんこれもオールカラーの
作品ですが、ほぼ半世紀の画業歴を経て
、まだ描くかと 笑 イラストではあり
ませんから、当然、物語も綴っています。
まだまだわたせせいぞうという泉は枯れ
ていないことは確認出来ました 笑
画像は50周年を記念して出版された
作品です。迷わず購入しました。
現代では特に、イラストレーターとしての
イメージが強いわたせさんですが、私はなん
と言っても『ハートカクテル』です。以前
にも語りましたが、この作品は日本テレビ
にて当時の日本たばこが提供していた短い
深夜枠。たばこ一本のストーリー。ハート
カクテル。というキャッチフレーズで、19
86年から88年まで放映(原作はモーニン
グにて1983年から90年まで連載)され
ていました。私は当時中学生でしたが、
たった10分足らずの短いストーリーを
鮮明に覚えていて、大人になり、原作者や
時代背景などを調べることになりました。
まあ、この作品もまた、バブルの賜物。
気障ったらしい台詞に洒落たファッション
や車。アニメーションというよりは、モダン
なイラストにアテレコしたアーティスティッ
クな作品。バブル臭気全開で当時からアンチ
も多かったと聞いています。でもそれは
この作品の表層的な部分であって、じっくり
と味わってみれば、人情味溢れるハートウォ
ーミングな物語が多く。ショートストーリー
ならではの、人に想像を促す純文学のような
余韻をもたらします。ただ、、基本的な問題
なのですけれど、原作の吹き出しが手書き
なのは新規のファンが入りにくい要因の
一つとなっています。しかしこれは今更で
はあるし、わたせさんのこだわりの一つです
ので、ここでぼやいても詮無き事。味わい
はあるのですけどねぇ、、まあ、読み辛い
笑
『ハートカクテル』のアニメーション
といえば、音楽も捨て置けません。
松岡直也さんを中心に、島健さん。三枝
成彰さんなども参加しています。流麗な
ピアノの曲からポップでリズミカルな曲。
クラシックからジャズにビートルズ。果ては
ジャパニーズポップスまでと。幅広くBGM
として挿入されています。曲に関しては、今
現在80年代の作品を観ても、今現在20
20年代の作品を観ても、根底にあるものは
変わっていません。ベクトルというか、テイ
ストというか、変えずにいてくれています。
それはまあ、原作も同じですけれど。こう
いったブレない面があるのはファンとして
は嬉しいものですよね。
『ハートカクテル』には洋酒が多く登場しま
す。ビールはバドワイザー、レーベンブロイ。
スコッチウイスキーはカティサーク、ボウモ
ア。カクテルはスプリッツァ、ギムレットな
ど、覚えているのはこれくらいですか。他
にもたくさん登場しているはずです。これは
、時代背景もありますが、ご本人の
アイデンティティによるものが強いのでしょ
うね。ハードボイルドへの憧憬が自分には
あると、以前、何かのインタビューで話して
おられました。前述したYoutubeのわたせ
せいぞうチャンネルに『ワンダーカクテル』
という作品があります。全11話の中の7話
で、わかりやすくそのあたりが反映していま
すので、ご紹介。
この物語の最後に、ハードボイルド作家
レイモンド・チャンドラーの『ロング・グッ
ドバイ』での名台詞。「ギムレットには
早すぎる」を意識した描写があります。
観ていただけるとわかりますが、7話の
物語は男女の別れがメインです。これと
『ロング・グッドバイ』での、マーロウ
とレノックスの別れを重ねたかたちに
なりますか。主人公が最後にギムレット
を注文するのですが、、
このように注釈が入ります。何かと比べて
しまいますが、このあたりが村上春樹(
敬愛しています)さんとは違います。あの方
の作品はお構い無しに突き進みますからね 笑
ただ、、長い別れ(ロング・グッドバイの
邦題)で有名というのは、野暮ったいと
いうか、他にやり方はなかったのでしょう
か。まあ、なかったのでしょうね 笑
主人公がギムレットを注文したくらいでは、
チャンドラーを意識したことが伝わらない
ので、ショートストーリーでまとめるには
最善だったのでしょうけれど、何か他に、
と、つい考え込んでしまう作品でもあります
笑 この物語には、ボウモアやギムレッ
トが登場しますので、とても気に入っている
作品の一つです。良かったらご覧になって
ください。タイトルは、『暖炉の女神』に
なります。
さて、長くなりましたが、今回はわたせ
せいぞう展での様子と、一部だけではあり
ますが、作品の紹介をさせていただきまし
た。画業50周年ということですが、まだ
まだ楽しませていただいております。
また個展があれば、可能な限りお邪魔した
いと思います。今回はこの辺で。
では、また、、