ポートワインを見つめ直す。

皆さんこんにちは、バーシエールの岡本です。

暖かいのはありがたいのですが、三寒四温の

時期は花粉も重なって過ごしにくかったりし

ます。辛いですよねぇ、、。

さておき。今回はタイトルにもある通り。ポート

ワインという酒について少しお話しします。

ます始めにポートワインとは、ポルトガル北部

ドウロ地方で醸造されている酒精強化ワインで、

スペインのアンダルシア地方で造られている

シェリー酒や、同国ポルトガル領マデイラ島の

マデイラワインと並ぶ、世界三大酒精強化ワイン

の一つです。酒精強化ワインとは、ワインの発酵

を糖分が残っている状態でブランデーなど、蒸留

酒を加えることで止めて、ブドウの果実味をその

まま活かしたワインになります。糖分を多分に

残したまま熟成されますので、一部を除いて、

その多くは甘口のワインに仕上がります。ポート

ワインには、ホワイトとルビーが存在し、ホワ

イトポートは酸味が強く、食前酒として飲まれる

ことが多いのに対し、ルビーは甘口で、食後酒と

してチョコレートや葉巻などと合わせて楽しむ

ワインです。ポートワインは生産、販売共にルビ

ーが主体になりますので、ここではルビーについ

てのみ記述しますね。

ルビーには幾つかの種類があります。こちらは

ルビータイプと呼ばれる基本的、且つ、初歩的

なタイプのポートワインです。ルビータイプは

通常のワイン同様、短期間の樽熟成を経て世に

出ます。安価な上に、フレッシュなブドウの果実

味を手軽に味わうことができる反面、長期熟成

のものと比べ、酸化に弱いのがたまにきず

でしょうか。20世紀初頭に赤玉ポートワイン

という酒が日本でも流行しました。

現在でほ赤玉スイートワインと名前を変えて販売

されておりますが、ルビータイプはこれに似て

ますね。非常に甘いので、オンザロックで飲むの

もありだと私は思います。

こちらはヴィンテージポートですね。その名の

通り。瓶詰めされた西暦がヴィンテージ表記され

ております。これに因んで、ポートワインの主な

輸出先であるイギリスでは、誕生日に合わせた

ヴィンテージのポートワインを贈る風習があるの

だとか。まあ、それはさておき。ヴィンテージ

ポートとは、ルビータイプの上位互換のような

ものです。長期熟成のルビータイプなのです。

より洗練されたルビータイプということですね。

ヴィンテージポートは、人一人の人生ほど熟成

することが可能なのだとか。不思議なのは、

それほどの長期熟成でも、比較的安価であると

いうこと。通常のワインやウイスキー、ブラン

デーなどに置き換えて考えると大変なことに 笑

甘口だからといって馬鹿に出来ない深い味わい

ですよ。是非お試しを。

そしてこちらはトゥニータイプのポートワイン。

長期の樽熟成という点ではヴィンテージポート

と変わらないのですが、トゥニーは長期の酸化

熟成なので、酸味が少し加わることで甘さが

くどくなく、飽きがきません。その上、飲み頃

を迎えてから瓶詰めされるので、ワイン類特有の

澱引きが必要ありません。飲み頃を既に迎えて

いるわけですから、瓶熟成が要らないのです。

澱引きしてから出荷になりますから、あとは

頂くだけの優れものですね。私はポートワインの

中では一番多く頂いていると思います。どのメー

カーさんでもある程度美味しく頂ける安定感も

ありますね。甘さ加減がちょうどいい 笑

さて、ポートワインをいくつか紹介しましたが、

気になる銘柄はあったでしょうか。バーでの

運用と致しましては、葉巻やチョコレートと

合わせる場合、ウイスキーやブランデー、ラム酒

などが候補に上がるかと思いますが、高めのアル

コール度数が気になってソーダや水で割って

しまうようなら、ポートワインをお試しになって

みると良いですね。酒精強化ワインといっても

アルコール度数は18度程度ですから。ヴァリ

エーションに加えてみるのも一興です。きっと

満足頂けますよ。お試しください。

では、また、、

ここ最近の新入荷? 再入荷?

皆さんこんにちは、バーシエールの岡本です。

今回はいくつか入荷のお知らせです。

こちらはシングルモルトウイスキー。クラクスト

ンズ社のカリラ8年です。以前、同社同銘柄の

6年を入荷した経緯があるのですが、非常に

評判が良かったこともあり、何より私がもう一度

飲みたかっため、再入荷です。まあ、以前は6

年物でしたから新入荷になりますか。ノンチル、

ノンカラー、カスクストレングスの生アイラ。

アルコール度数は59.2度。バーボン樽での

8年熟成となっております。熟成年数以外は

以前入荷したカリラとそれほど変わりませんが

、余韻の種類が少し違いますね。以前の若さに

任せた突き抜けるような余韻は本銘柄にはなく、

滑らかに広がってゆく、より洗練された余韻を

味わうことが出来ます。以前のカリラを経験なさ

った方も、そうでない方も是非お試しください。

美味しいですよ。探した甲斐がありました。

元々、ダニエル・クレイグ版007のカジノロ

ワイヤルに登場したというだけで扱っていた

マウントゲイですが、今では独り立ちをしてして、

美味いラム酒ラインナップの一翼を担っており

ます。当店では、お手頃な価格とそのバランスの

取れた味わいから、グレードはXOと決めている

のですが、いつのまにかトリプルカスクのみの

リリースになっておりました。アメリカンオーク

、バーボン樽、コニャック樽とまあ、こちらは

こちらで味わい深く。楽しめそうですね。

再入荷のようで新入荷です 笑

今回はどちらも再入荷のようで新入荷ですね 笑

是非お試しください。では、また、、

久々のグラス修理@浅草

皆さんこんにちは、バーシエールの岡本です。

二月に入ってからは快晴が続いて気温も上がり、

比較的過ごしやすいですね。今回はグラス修理

も兼ねて、グラスや備品を補充しに浅草のグラス

工房創吉さんにお邪魔しましたので、その様子を

少しお話します。

数年前に当ブログでも取り上げましたが、それ

以来、久しぶりの来店となりました。創吉さんは

通信販売もなさっているので、普段はそちらから

購入するのですが、用事が増えるとお邪魔する

流れになっております。しかし、この店はいつ

お邪魔しても緊張感があります。狭い店内の至る

所にガラス製品が置かれているので、いつまで

経っても緊張の糸が解れません 笑 小さな

お子様連れの方や、リュックサックを背負った

ままの方も散見出来ますが、気が知れませんね

笑 会話も憚られる、といった空気感ですから

笑 北海道小樽の硝子館を彷彿とさせます 笑

破損したグラスを修理に出して多少の世間話。

買い物を済ませたらそそくさと店を後にします。

酔って入ってはいけないお店ナンバーワンです 笑

そして緊張感が解れると途端に腹の虫が騒ぎ出し

ます 笑

今回訪れたのは、観光地としても名高い老舗の

洋食屋ヨシカミさん。休日ということもあり、

やはり混雑しており、30分待ちでしたが、

案ずることなかれ、時間を指定されて呼び出し

てくれるそうで、迷わず近隣の大衆酒場へと

駆け込みました 笑

前菜の帆立のカルパッチョと共にビールを煽り、

待ちに待ったビーフシチュー。赤ワインが進む

取り合わせですが、残念ながら冷えた赤ワイン

しか用意がなく、渋々ハーフボトルを注文します。

文句言いながらあっという間になくなりましたが

ね 笑 ビーフシチューは名物だけあって流石に

美味しいですね。深いデミソースにほろほろの

お肉。それだけではなく、ガロニ(付け合わせ)

の存在が光っていました。甘く煮たインゲン、

ニンジン、マッシュルームにお手製のフライド

ポテトと満足はしましたが、観光地特有のお高め

のお値段が少し気になりますかね 笑

迷いましたが、やはり注文してしまったオム

ライス。この日はカウンターの端に通されまし

たが、オープンキッチンの洋食屋でオムライスの

メイキングを見せるのは反則です 笑 私の滞在

時間だけで、7、8回は特大のフライパンでチキ

ンライスをひっくり返しておりました。ツートッ

プの焼き場の片翼はひたすらナポリタンを振り

続けている状況。もちろん交代制なのでしょうが、

一体、一日何回振るのでしょうか 笑 私も職業

柄シェイカーを振り続ける日はありますが、腱鞘

炎や肘の具合がとても気になってしまいました

笑 オムレツなどは私も作りますが、フライパン

のトントンの所作はプロもアマチュアもやはり

可愛らしいですね 笑 ほっこりします 笑

このあと、メンチカツを単品で注文し、脂ぎった

口内をジンリッキーでゆすいでおいとましまし

た。満腹過ぎて最後にうまく笑えていたかわか

りませんが、手厚く見送って頂き気分が良くなっ

てしまった私は、いつも通り、とっぷりと暮れた

夜の街へと消えてゆき、その日一日を台無しに

したのでした 笑

画像は雪国というカクテル。日本を代表する

カクテルです。新調したグラスに何を最初に注ぐ

か迷いましたが、真冬にぴったりなカクテル

ですね。こちらも以前、当ブログで取り上げまし

たが、創作したのは井山計一さん。山形県酒田市

のバーケルンのバーテンダーです。2021年

5月にお亡くなりになりました。享年95歳。

生涯をバーテンダーに捧げたわたくし共の大先輩

です。かなり遅くなってしまいましたが、追悼の

意を込めて献杯とさせて頂きました。皆さんも

是非、真冬の定番としてお試しください。

では、また、、

archives

創吉

雪国

マイ フェイヴァリット カクテル。

皆さんこんにちは、バーシエールの岡本です。

雪が降るとか降らないとか。東京で雪は、今どき

子供でも喜びませんので勘弁して欲しいですよね

笑 さて、寒い日が続きますと暖かいカクテルが

欲しくなりますよね。今年もまた、ホットカクテル

が恋しい季節。定番のアイリッシュコーヒーと、

ヴァンショー(ホットワイン)は欠かせませんね。

今年のホットワインは、カシスリキュール、ハチ

ミツ、生姜のスライス、八角、シナモン、カット

オレンジにブルーベリーを加え、サッと火にかけ

てアルコールを飛ばしてからお出ししますので、

アルコール度数は低めになります。ヨーロッパで

は定番のホットカクテルですね。苦手な副材料が

あれば除きますので、お気軽にお申し付けくださ

い。

そしてこちらはダニエル・クレイグ版007シリ

ーズで慣れ親しんだヴェスパーマティーニに新た

な風です。そもそも、ヴェスパーマティーニには、

ゴードンジン、ウォッカ、キナ・リレというトニ

ックワインが使われていましたが、キナ・リレが

終売となったあとは、後継銘柄であるリレ・プラ

ンを使用するのが当たり前になっていましたね。

私が最近気に入って使っているのが、画像にも

あるように、キナ・アエロ・ドールというアルコ

ール度数18パーセントのキナのリキュールです。

キナの独特な苦味と甘さがあいまったこのリキュ

ールを使ったヴェスパーマティーニは、原案で

あるヴェスパーマティーニを彷彿とさせます。

ただ、今まで代用されていたリレ・プランも実は

代理店がかなり前から手を引いていますので、

現在出回っているものは、並行輸入品となります

から、いつ飲めなくなるかわかりません 笑

味わいとしては、かなりの差異がありますので、

ヴェスパーマティーニヘビーユーザーの方々は、

気分で使い分けるとよろしいかと思います。

以上二点。最近のお気に入りカクテルでした。

是非お試しください。では、また、、

ここ最近の入荷。

皆さんこんにちは、バーシエールの岡本です。

毎年成人の日が終わると途端に一年が動き始め

ますよね。バタバタしておりますが、ここ最近の

めぼしい入荷のご紹介です。まずは日本限定の

銘柄を三つ。

グレンファークラス・カスクストレングス12年

。こちらは3000本限定ということで、入荷

に至りました。グレンファークラス特有の直火

焚き蒸留から成る芳ばしさと、フィニッシュだけ

ではなく、100パーセントオロロソシェリー

の樽で熟成させた旨味に付け加え、本銘柄はカス

クストレングスで仕上がっておりますので、それ

らの恩恵をそのまま味わうことが出来ます。グレ

ンファークラスのカスクストレングスといえば

105が有名ですが、本銘柄は日本限定な上に

3000本のみのリリースですからね。いつでも

飲めるというわけではございません。105は

そのプルーフ表記にもあるように、アルコール

度数は60度となっています。対して、本銘柄

は57,6度と多少低めですが、咽頭にグッと

くる飲みごたえと旨みはけっして劣るものでは

ありません。是非一度、ご用意出来るうちに

お召し上がりください。

続いてはこちら。スモーキースコット・カスク

ストレングス。こちらも日本限定の銘柄。中身

はカリラの5年で、バーボン樽での熟成が施され

ております。入荷から少し経ちましが、お客様

からの評価も悪くありません。若いカリラは私

好みではあるのですが、とにかくパンチ力があり

ますね。アルコール度数は58,2パーセントと

、カスクストレングスとしては並の高さなのです

が、ボリュームのあるピートスモークがブラック

ペッパーやジンジャー。あるいは柑橘の苦味で

しょうか。そのような類いを引き連れて一気

呵成に襲ってきますね 笑 なぜこれが日本限定

なのか、その経緯を知りたいです 笑 刺激的

なウイスキーをお求めならば、きっと期待に応え

てくれるでしょう。こちらは数量限定とは聞いて

いませんが、お早めにどうぞ。

更にこちらはグレンアラヒー10年 キュヴェ

カスクフィニッシュ。こちらも日本限定です。

5つの異なる原酒をヴァッティングしたヴァッテ

ドモルトですね。オロロソシェリー、ペドロヒメ

ネスシェリー、マルサラワイン、グラッタマッコ

社のワイン、ヴァージンオーク。これらの樽で

それぞれ熟成させた原酒をヴァッティングした

日本限定のグレンアラヒーです。日本のユーザー

層の好みを考慮してブレンドされております

ので、ジャパニーズウイスキーを好む大抵の日本

人は満足するテイストとなっております。アル

コール度数は48度と、少し高めに設定されて

いるのですが、これが絶妙です。ブレンドされて

いる原酒の内容からして結構な甘さを持つウイ

スキーであるのは推して然るべしなのですが、

アルコール度数を少し上げることで風味が若干

ドライになるので、くどくない甘味が完成して

いるのです。美味しいですよ。葉巻にもよく

合います。是非。

そしてこちらはギィ・ピナール コニャック・

ファンボア・セレクション B IO。コニャック

ブランデーですね。ただ、コニャックブランデー

でファンボアを名乗ることは珍しいです。ファン

ボアとは、コニャック地域の一区画の名称です。

コニャック地域はワインでいうところのテロ

ワールと同様に、土壌や小気候によるブランデー

の製造定義に基づいて、6つのエリアに分けられ

ているのですが、ポピュラーな銘柄はほぼ、汎用

性の高いグランドシャンパーニュエリアで作られ

ています。ファンボアのエリアは早熟なブランデ

ーを作るのに適しているため、基本的には、ブレ

ンド用ですね。スコッチウイスキーに例える

なら、グレーンウイスキーに相当するでしょう。

ジャパニーズウイスキーなら、知多がそれに当た

ります。元々ブレンドに使われることが多く、

早熟なブランデーだけに、その味わいはライト

です。しかし、ギィ・ピナールは無農薬で丁寧に

葡萄ジュースを作っておりますので、葡萄の風味

が非常にジューシー。以前、これはもう随分と

昔になりますが、日本人が大好きなコニャック

ブランデーのハウス(蒸留所)。ポールジローが

売り出したグレープジュースがありました。この

ジュースは現在でも製造、販売しております。

ギィ・ピナールはこのポールジローのグレープ

ジュースを彷彿とさせるほどにジューシーです。

もちろんブランデーですから、アルコール分が

加わることで甘さは控えめになりますが、まあ、

簡単に言ってしまえば、ライトなポールジローと

いったところでしょうか。コニャックブランデー

の割に安価でご提供出来ますので、是非お試し

ください。

さて、今回はこのあたりでしょうか。どれも

日本人好みの銘柄ですので、満足頂けるかと

思います。では、また、、

明けましておめでとうございます。

 

皆さんこんにちは、バーシエールの岡本です。

新年が明けましたね。今年はうさぎ年ということ

で、うさぎの上り坂といいますか、兎にも角にも、

感染症の収束を祈願しつつ、前に進んでゆく所存

です。本年もどうぞよろしくお願い申し上げ

ます。

ところで、今週末の連休の営業日ですが、8日

(日曜日)は営業致します。9日(月曜日)が

休業日となりますので、ご留意くださいませ。

では、また、、

2022歓喜の歌。及び年末年始のお知らせ。

皆さんこんにちは、バーシエールの岡本です。

今年も残り僅かとなりました。相も変わらず

感染症に振り回された一年ではありましたが、

少しずつ前には進めているようにも思えます。

さて、今回は今年一年の締めくくりの幕開けにと、

久方ぶりに、ベートーヴェン交響曲第9番。年末

の風物詩である〝第九〟を拝聴して参りました

ので、その様子と、年末年始の営業日について

お話しさせて頂きます。

今回の舞台はこちら。池袋西口の東京芸術劇場。

演奏は昨今の池袋ではお馴染みですね。パシフィ

ックフィルハーモニア東京。指揮は飯森範親さん

です。先のサントリーホールも然り、東京芸術

劇場もコロナ禍になってからは初の来場となりま

した。随分とご無沙汰しています。毎日目の前を

通ってはいるのですけれどね 笑 今回はちょう

ど良く〝第九〟のチケットが手に入りましたので

楽しみにしておりました。日時の都合も申し分な

く、地元で堪能することが出来ましたのでとても

満足しています。

会場入りして奥に進むとバーラウンジを発見。

気付けにビールを一杯だけ注文し、天気も良かっ

たのでテラスにて、見慣れた池袋の風景を眺め

ながら喉を潤します。

席に付くと間も無くチューニングが終わり、指揮

者の入場後、速やかにワーグナーの牧歌が流れ

ました。これはわたくし失念しておりまして、

演目は元々2曲あったようです。こちらとしまし

ては良いウォーミングアップとなりました。オケ

の雰囲気も伝わってきますしね。牧歌の演奏後

休憩に入り、舞台の空気も温まったところで

今度は声楽の面々も加わり、〝第九〟の第一楽章

に入ります。私好きなんですよねぇ。弦楽器のフ

ェードインからドラマティックに始まるこの楽章

の冒頭。グッと引き込まれます。第二楽章のスケ

ルツォは毎度のことながら錯覚を覚える、第7

交響曲の三楽章と酷似する速いテンポの曲。私は

どこまでいっても素人ですから、しばらく聴いて

いなかったりすると聴き分けが出来ないのですが、

ティンパニの4連? 5連? の連打がこちらに

は組み込まれているので、そこで錯覚から逃れ

ます 笑 この連打はティンパニの見せ場ですね。

パーカッシブならではの腹に響く低音の連打は

とても強く印象に残ります。そして曲は打って

変わって第三楽章へ。世界の調和を表している

などと評されていることが多い、この楽章は非常

にゆったりとしたテンポ。大抵の人はこの第三

楽章が一番の舟漕ぎポイントになるでしょうね

笑 ドラマティックな第一楽章に躍動感溢れる

第二楽章。少し休憩にしては旋律が美し過ぎて

ウトウトするのも仕方がないのですが、中盤以降、

〝第九〟のシンボルである第四楽章への架け橋

となる主題が用意されておりますので、ここは

一つ我慢(失礼)して聴いて頂きたい 笑 そう

いえば、この日隣の席にいらした初老のご夫婦ら

しき方々の旦那さんが、ワーグナーから徹頭

徹尾。居眠りを決め込んでおられました。たまに

起きたかと思えば、ハッと気が付いたように、

持参した双眼鏡を覗き込んでいます。自分はきち

んと聴いているという奥様へのアピールだった

のでしょうか 笑 まあ、いい音楽ほど眠くなり

ますからね。わかりますが、眠たい人を観察する

のは楽しいものです。授業中にうたた寝してし

まい、それを何とか誤魔化そうとしている生徒

を眺めているようで面白かった 笑 さて、曲は

第四楽章お馴染みの力強い立ち上がり。一般的

にはこのフレーズが一番耳にする頻度が高いので

はないでしょうか。第四楽章はやはり、年末の

定番として歓喜の歌が有名ですが、序盤の声楽

なしのフレーズは年末以外でも様々なメディア

で扱われていますので、耳に馴染んでいるはず

です。

曲は盛大に主題が演奏され、一斉休符のあと、

歓喜の歌の独唱一番手であるバリトンの歌声が、

静まり返った会場内に響き渡ります。この場面は

何度聴いても緊張感がありますね。今ではEUの

国歌にまでなっている歓喜の歌ですが、最初から

交響曲の一部として作られたわけではなく、元々

がドイツの詩人、フリードリッヒ・フォン・シラ

ーによって、ドイツの学生向けに書かれた自由讃

歌という詩なのです。この詩に感銘を受けたベート

ーヴェンは、それまでの音楽界ではタブーとされ

ていた、声楽入りの交響曲を作り、世間を騒がせ

ます。声楽はオペラで演じ、聴くもの。それが

当時の常識だったのです。では、何故、彼は禁忌

を犯してまで交響曲に歌を入れたのでしょう。

ベートーヴェンが後天的な聾唖者(ろうあしゃ)

であったことは有名でしょうが、世界で初めての

フリーランスミュージシャンであったことは

あまり知られていないと思います。王族や貴族の

お抱えアーティストとして生計を立てていくのが

当たり前であった時代でフリーランスの道を歩む

こと自体異端なのですが、やはりこれには持病の

難聴が大きく関わっていました。難聴の症状が

進むにつれて、その絶望感から精神疾患を招く

事態となり、孤立を余儀なくされたのです。

しかし、皮肉なことに症状が進んでも作る楽曲

のクオリティーは衰退しません。交響曲としては

遺作となった9番もその中の一つ。交響曲は10

番を途中まで書いていたようなので、自身の健康

とは裏腹に、その才能の泉はまだまだ潤沢であっ

たといえます。先述した通り、歓喜の歌は

自由讃歌という詩が元になっています。この

自由讃歌も実はかたちを変えていて、フランス

革命後のヨーロッパでは、〝自由〟だとか、

〝平等〟というワード自体がはばかられる世の中

でしたから、政治的な圧力を受けてまず、曲名を

歓喜に寄すに変更。それとこの詩はそもそも

封建制度から自由を手に入れようという気概の

詩でしたから、そのようなニュアンスを持った

文言もすべて添削、推敲されたようです。この

ように、歓喜の歌のソースである歓喜に寄す

(自由讃歌)は元々自由と平等を謳った詩で

あったことがわかると、ベートーヴェンが何故

無理をしてまで9番に歌を入れたのかがわかる

ような気がします。歓喜の歌に使われている歓喜

とは、ドイツ語でFreude(フロイデ)。これを

同じくドイツ語でFreiheit(フライハイト、自由)

に戻してみると、ベートーヴェンが9番で本当に

伝えたかったのは歓喜ではなく、自由への渇望

だったのではないのかと思えてきます。もちろん、

自由讃歌と同様に政治の圧力が掛かるのは目に

みえていたでしょうから、歓喜の歌は歓喜に寄す

をモチーフに構成されています。そして彼が

欲した自由とは、普遍的な自由なのか、あるいは

自身の苦悩からの自由ということもあるでしょう

。難聴が重くなり始めた中期から晩年まで、

ベートーヴェンの作品は、苦脳の先の歓喜を

想起させる作品が目立つようです。その歓喜が

ひと筋の光明となって、観る者、聴く者を導い

てゆくのでしょう。9番を完成させた頃には既に

全聾(ぜんろう)であったベートーヴェン。彼が

最後に聞いた音楽は一体どんな音楽だったのでし

ょうか。それはもしかすると、18世紀という

激動のヨーロッパを生きた人々の自由讃歌だった

のかもしれません──。

 

曲は大合唱の真っ只中。可愛らしいマーチが流れ

たあと、テノールの勇ましい独唱。次いで、歓喜

の歌といえば、難易度の高い合唱の二重フーガ

ですね。皆さん口角を上げて朗らかに、しっかり

と歌い上げておりました。素晴らしい出来栄え

です。ソプラノ独唱最後の最高音は、私好みの

シャウト系。血管が切れそうです 笑 そして

ラストは興奮状態そのままに、らんちき騒ぎが

スタート 笑 トップギアのまま、ドライブ感

満載でひたすらトニックコードがジャンジャン

回ります。こちらもいつも通り、ヘッドバンキ

ングが止まりません 笑 隣の居眠り紳士もさす

がに起きています 笑 拍手喝采の中、年末の

〝第九〟らしく華やかに大団円を迎えると、

指揮者の飯森範親さんからご挨拶がありました。

まず、この日の演奏は急遽決まった特別公演で

あったにも関わらず、多くの方々に集まって

頂いたというお礼と、パシフィックフィルハー

ニア東京を今後とも宜しくという旨の挨拶でし

た。実はこちらの楽団は今年2年目の若い楽団

なのです。楽団員の方々もお若いメンバーが

目立ちました。とてもフレッシュで勢いの

あるオーケストラですよ。池袋での演奏も多い

ことですし、皆さんも是非一度お試しになって

みてはいかがでしょうか。

パシフィックフィルハーモニア東京

さて、長くなりましたが、年末年始の営業日の

お知らせです。

2022年は12月30日まで営業。

12月25日(日曜日)は営業致します。

2023年は1月5日(木曜日)からの営業と

なります。営業時間は変わらず、19時〜3時

です。あと半月ほどで今年も終わりますが、是非

また皆さんの元気なお顔を拝見させてください。

では、また、、

それと、おまけです 笑

絶賛公開中です。災害三部作? の三作目らしい

です。新海誠さん。吹っ切れたようですね。

最高傑作かと思います。ただ、問題作ではあると

思いますので、賛否は顕著に分かれますが、

素晴らしい作品です。皆さんも是非ご覧になって

ください。私は二度足を運びました 笑 戦争。

事故や災害。人災も含めて、時が来れば、向き合

うことも必要です。忘れた方がいいことも多い

ですが、警鐘を鳴らし続ける為にも、けっして

風化させてはなりません。それを念頭において

ご覧になってください。

ここ最近の新入荷。

皆さんこんにちは、バーシエールの岡本です。

今年もあと二ヶ月と思うと気が急く思いです。

さて、ここ最近の新入荷です。

まずはオクトモアですね。もう13シリーズに

なりますか。時の流れを感じますね。今回のリ

リースはスコティッシュバーレイ、オロロソカス

ク、アイラバーレイの3銘柄ですが、ひとまず、

オロロソカスクのみの入荷です。アルコール度数

58.3度。フェノール値137.3PPM と、まあ、

変わり映えはしませんが、相変わらずの破壊力。

シェリーカスクならではのオイリーでコクのある

飲み口は葉巻にもベストマッチすることでしょう。

13番目のオクトモアを是非味わってください。

続いてこちら。リッチクォー ゴールド・オブ・

モーリシャス。アフリカの東。インド洋に浮かぶ

リゾート地。モーリシャス島産のラム酒です。

モーリシャス島は『インド洋の貴婦人』と呼ばれ、

世界有数のリゾート地として名高いようですね。

以前から気になってはいたのですが、正直。リゾ

ート地で製造される酒に信用を置いてはいなかっ

たので、先送りになっていました。ところが評価

は上がる一方。今更とはいえ仕入れてみれば、

噂に違わぬ美味しさに舌鼓を打ちました。半年

から一年だけポートスタイルのワイン樽で熟成

させてからフィルターを通すようですね。美味し

さの秘密はここです。甘さがくどくなく。それ

でいてポートの恩恵はしっかりと受けています。

割らずに生で頂くか、ロックで冷やして飲むこと

をお勧めします。是非お試しください。

そしてこちらが最後になりますが、トロワ・リ

ヴィエールのトリプル・ミレジム。ヴィンテージ

ものを三点ブレンドし、より芳醇なラム酒へと

進化させた逸品です。今回が4度目のリリース

となりました。その洗練された味わいは、数ある

フランスの海外県のラム酒においても秀逸で、

アグリコール製法の始祖たる銘柄といえるでしょ

う。こちらも割らずに召し上がってください。

さて、以上が最近のめぼしい入荷ですかね。

では、また、、

a piacere(ア ピアチェーレ)

皆さんこんにちは、バーシエールの岡本です。

食欲の秋、スポーツの秋、芸術の秋と。秋が

深まりを増すと何かと食指が働きませんか。

今回、極めて恣意的にオーケストラを拝聴して

参りました。秋の高い空を眺めていたらいい音楽

が無性に聴きたくなったのです。手当たり次第

に探して辿り着いた曲目はみんな大好きベートー

ヴェンの交響曲第7番とそれに付随して8番。

私、実は7番をライブで聴いたことがなかったん

ですよね。あまりに有名な楽曲なので耳にする

機会が多いため、聴いた気になっていたのですが、

振り返ってみれば、ベートーヴェンのシンフォ

ニーは5番、9番しか経験しておりませんでし

た 笑 これはもう渡に船ということでチケット

を即購入。何せ締切日当日だったので末席も末席。

奥まった角の席を確保。まあ、それでも良いの

です。今回の私のテーマはア ピアチェーレ

(自由に、気ままに)ですから。下準備はなし。

たまさかに聴きたくなって、たまさかに席が取れ

て。あとは流れに任せてみる。そんな日もあり

ます。

さて、やって参りました。サントリーホールです。

コロナ禍もあり、ライブコンサート自体控えて

おりましたので随分とご無沙汰してしまいました。

最後に訪れたのは2014年か15年か。テニス

仲間の所属する楽団が開催した、これもまたベ

ートーヴェンの9番でした。

前説が終わり。楽団とコンサートマスターが揃う

と、速やかにチューニングが行われ、拍手と共に

コンダクターが入場し、間もなく交響曲8番の

演奏が始まりました。

今回指揮を取ったのはこの方。ピエタリ・インキ

ネン。オーケストラは日本フィルハーモニー交響

楽団です。インキネンさんはフィンランド出身の

ヴァイオリニスト。シベリウス音楽院にて学びを

深めたこともあり、演奏会ではシベリウスの曲を

指揮することが多いようです。現在は日フィルの

首席指揮者を務めています。私は今回演目だけで

チョイスしましたので、ほぼ場当たり的に聴かせ

て頂きましたが、普段シベリウスをなさっている

だけあって、7番8番共にとてもダイナミックに

指揮を取っていらっしゃいました。

演奏は8番を終え15分の休憩ののち、メイン

である7番の演奏に入ります。まずは長めのテュ

ッティ。一斉演奏から壮大に始まります。正直。

第一楽章は私好みの演奏ではなかったのですが、

第一楽章序奏から主題に入る手前に私の一番の

お気に入りパートであるフルートのソロがある

のですが、このパートを女性が担当なさっていて

くれたおかげで何とかモチベーションを維持出来

ました。こちらのパート。私は勝手に

〝小鳥のさえずり〟と呼んでいます 笑 静まり

返った場内にフルートの繊細な音色が響きます。

とても可愛らしいパートですので、出来れば女性

に。というのが私の個人的な願望です 笑

第一楽章は一貫してキャッチーなメロディライン

ですので、ドラマや映画にアニメでもよく使われ

ています。やはり爆発的に有名になったのは

『のだめカンタービレ』なのでしょうが、私の中

で印象が一番強いのは、SFアニメの金字塔。

『銀河英雄伝説』ですかね。銀英伝では第一楽章

だけではなく、第二、第四楽章も使用されており

ますので、非常に印象深いのです。あの壮大な

宇宙艦隊戦との相性は抜群でしたね。心が躍り

ます。

ノリの良い第一楽章を終え、曲は一転してメラン

コリックな第二楽章へと移ります。アレグロ(速

いテンポ)かアレグレット(やや速いテンポ)で

指揮者によって異なるらしいのですが、今回の

演奏は私の耳が確かなら、アレグレットであった

と思います 笑 しめやかに、まるでレクイエム

のような曲調ですから、速くする必要はないと

思うのですが。諸外国では葬儀でも使われていたり

するようですからね。こちらの楽章は管楽器の

フェードアウトで締めます。この辺りからオーケ

ストラにまとまりが出来てきました。第一楽章は

少し残念でしたからね。造詣が深い方達なので

しょうね。私の席の両サイドが深いため息を何度

も吐いていましたから 笑 まあ、仕方ない 笑

そして曲は再び一転して華やかな第三楽章へと

入ります。所謂、スケルツォです。速さはプレス

ト(極めて速く)で三拍の速いテンポに加えて

スタッカートの主題が続き、強弱の付け方や

休符の入り方が変わっているので飽きずに楽しめ

ます。独特の休符で唐突に終わり、一呼吸おいて

ダンサブルな第四楽章が幕を開けます。この楽章

はベートーヴェンが泥酔して作ったのでは、と

噂されるほど、力強く、激しい曲調なのです。

ロックであると評されることが多く、速さは

アレグロで、更にコン・ブリオ(元気よく)で

演奏されます。途中、短調に変わったり、

音が飛び跳ねたりと曲の表情の移り変わりが激し

く。とにかく、速いテンポで反復反復ですから、

こちらもヘッドバンキングが止まりません 笑

あの聴き手を巻き込むグルーヴ感はもはやクラ

シックの範疇を超えています。渋面を作った両

サイドの間で私だけ頭を振っているという奇妙な

絵面の中、演奏は文字通り大団円を迎え、大喝采

で幕を下ろしました。私は〝小鳥のさえずり〟を

奏でてくれたフルート奏者の女性を目で追いなが

ら席を立ち、この日一番の感動をくれた人物へ

黙礼し、会場を後にしました。

さて、演奏会が終われば腹ごしらえです。斜向か

いのカフェへと駆け込みました。ランチタイムが

終わってしまうからです 笑 この場所には以前

、オーバカナルというチェーン展開しているブラ

ッスリーが存在したのですが、どうやら2018

年に閉店したようですね。サントリーホールでの

演奏会の後は大抵の場合、オーバカナルで田舎風

テリーヌとスプリッツァで一杯やりながら演奏会

の余韻に浸っていたのですが残念。画像のカフェ

は同じ場所だからと、ほとんどルーティンように

吸い込まれました。スプリッツァを啜って一息

吐くと。演奏会の余韻が押し寄せてきます。

ベートーヴェンの交響曲には随所に対話が見受け

られます。7番だけではなく、6番(田園)など

が良い例でしょうか。私が感銘を受けたフルート

のソロパートにも、弦楽器との対話が用意されて

いて、旋律を掛け合いながら曲が進んでゆきます。

そう。まるで会話を楽しんでいるように。ここに

音楽の真髄をみます。音楽とは会話。曲を作る人

がいて、それを奏でる人がいる。我々はその方達

の声を、楽器を通して耳にし、話したければ賛辞

を与えて気持ちを伝えればいい。簡単なことなん

です。

つい考え込んでしまい。時計を見ればいい時間

です。この日は土曜日でしたから、私は仕事です。

小忙しく会計を済ませて外に出ると、気持ちの

良い風が体をすり抜けてゆきます。久々に気負う

ことなく良い時間を作れたことに大変満足しまし

た。皆さんも是非、空いた時間に忘れていた自分

らしさをもう一度見つけてみてください。堅く

考えず、思うがままに。そう。ア  ピアチェーレ

で。では、また、、

感染対策で発声が禁止されておりましたので

今ここで。Bravo!

ロジャー・フェデラー引退。

皆さんこんにちは、バーシエールの岡本です。

随分と涼しくなってきましたね。過ごしやすい

のは良いのですが、季節の変わり目特有の体の

ダルさに見舞われている今日この頃です。

さて、唐突ですが、皆さん、ロジャー・フェデラー

というプロテニスプレイヤーをご存知でしょうか。

お客さまの中にはお話している方もいるかと思い

ますが、わたくし、プライベートでテニスを少々

嗜んでおりまして、そこそこ長く続けております。

そして先月、プロキャリア23年という長く鮮烈な

テニス人生にピリオドを打った彼を、心から敬愛

する信仰者の一人です。ロジャー・フェデラーと

いう名は、テニスに精通する者なら誰でも、いや、

テニス界にとどまらず、どこかで一度は耳にした

ことがあるのではないでしょうか。4大大会

(グランドスラム)のシングルスで20勝。

世界ランキング1位最長連続記録237週を

成し遂げたフェデラー史上最高のテニスプレイ

ヤーの一人とみなされています。しかし、

個人としましては、フェデラーの存在はその昔、

日本野球の王と長嶋に例えられたように、記録

よりも記憶なのです。もちろん全盛期の王さん

のように、世界記録更新という偉業を達成すれば

記録として後世に語り継がれることは間違いあり

ません。ですが、記録は王さんほどではないに

せよ、長嶋さんのウィットに富んだ記憶に残る

エンターテイナーとしてのプレイスタイルも、

それこそまさに永久に不滅です。これはプロの

アスリートとしてはとても大事なことです。所謂、

ヒーロー性というものを持っているかどうか。

記憶に残る名シーンをどれだけ残せるかどうか。

国民的な名選手ともなれば、一躍時の人となり、

その経済効果や思想は世界へと波及して、多くの

人々に様々な恩恵をもたらします。三十半ばから

始めたおじさんテニスプレイヤーの私にとって、

ロジャー・フェデラーは第二の青春のヒーロー

でした。そして彼が多くの人々のヒーローである

という理由ははっきりと数値化されています。

強ければいいという訳ではないのです。フェデ

ラーのグランドスラムでの勝利数は歴代3位に

なるのですが、この戦績が史上最高とはいかない

ものの、注目すべきはそのプレイスタイルなの

です。フェデラーはオールラウンドプレイヤーで

攻撃型の選手ですが、攻撃型の選手に多く見ら

れるアンフォーストエラーの数が、他の攻撃型

選手より、圧倒的に少ないのが特徴です。アン

フォーストエラーとは、簡単に言うと自滅型の

失点のことです。つまり、この数が少ない攻撃型

の選手は攻撃の成功率が高いということになり

ますね。世界で活躍するプロ同士の戦いではそう

簡単にエースは取れません。そこを取っていくに

は、針の穴を通すような、鋭くそして正確なショッ

トが必要になってきます。まあ、あれですよ。要

は必殺技の決まる確率が異常に高いわけです。

ヒーローといえば必殺技ですよね。これは万国

共通。老若男女も問いません 笑

日本では2018年のユニクロとの契約が話題を

呼びましたね。彼がユニクロのテニスウェアを

着てウィンブルドンでプレーしているのを初めて

目にしたときは、非常に気恥ずかしかったのを

覚えています。長年連れ添ったナイキという、

スポーツ界においては絶大な知名度と実績持つ

スポーツブランドを断ち切り、低価格競争に

奔走する日本の衣料メーカーと手を組むなど、

予想外にも程がありました 笑 フェデラーは

スイス出身ということもあり、高級腕時計メーカー

のロレックスとも契約しています。そんなセレブ

リティなイメージが払拭されて、彼を身近に感じ

ることが出来た反面。ユニクロのロゴが神聖な

芝生のコートで妙に浮いている気がして、日本人

としてそれが誇らしくもあり、照れ臭くも思えた

のです。

ちなみに、この大会は準々決勝で格下の選手に

あっさり敗北しました 笑 ユニクロよ、、。

そう思われてしまっても仕方がないのですが、

この頃フェデラーは絶不調でしたからね。準々

決勝まで進めただけでも御の字。そう。絶不調

といえば、こちらの画像でも確認出来ますが、

フェデラーがウィルソンの公式プロフィールには

ない謎の黒いラケットを使っている、とこの頃

噂になっていました。勝てない時期が続き、謎の

黒いラケットを使い、膝の痛みを訴えたのもこの

頃だったと思います。膝の問題は結局引退まで

引きずることになりました。この年。年初めの

全豪オープンで盟友のナダルと決勝を戦い、激戦

の末、見事勝利。2018年のこの勝利がグラン

ドスラム最後の優勝となったのです。

ラケットの話が出ましたので、私のコレクション

の中から二つ抜粋して紹介致します。まず上の

画像がウィルソンの n six one 95。フェデラーが

一番強かった時代。2004年〜06年のフェデ

ラーモデルのラケットですね。もちろん下位互換

です 笑 しかし、この頃私が超の付く初心者

でしたので、少し使いましたが、やはり腕前と

見合わず、直ちに初心者用のオーバーサイズに

切り替えました 笑 そしてその数年後。下の

画像のラケットが、ウィルソンの K SIX ONE TOUR

90。これは下位互換ではなく、フェデラーモデル

ですね。何を勘違いしたのか実践して使おうと

思っていたらしく、しばらくの間テニスの際に

持ち歩いていましたが、やはり名器は私を選んで

はくれず。徐々に眼福専用のラケットとなって

ゆき、今では自室のクローゼットの隅でひっそり

と時を重ねています 笑

そしてこちらが今でも愛用しているヘッドの

speed mp 2016。中級者向けですね。理想と現実の

狭間で活躍してくれた優れものです 笑

話が逸れましたが、画像はフェデラーの家族です。

母のリネットや妻のミルカ(元プロテニスプレ

イヤー)も枠に収まっていますが、やはり注目

すべきは最前列の子供達。正面左から女児が二人

に男児が二人並んでおりますが、この子供達。

何とそれぞれが双子です。2009年に双子の

女の子が誕生したときには、ああ、きっと、アメ

リカのウィリアムズ姉妹のようにテニスの道を

歩んでゆくのだろうなと想像していましたが、

その5年後。まさかの双子フィーバー 笑 男子

で双子のテニスプレイヤーといえば、これもアメ

リカのブライアン兄弟がいますが、もし四人とも

テニス界に入門。プロの世界で戦うとなれば、

前代未聞の双子ミックスダブルスが観られるか

もしれません 笑 年の差は五つですからね。

可能性としては充分にあります。残念ながら

年末年始にオーストラリアのパースで開催されて

いたホップマンカップ(男女混合国別対抗戦)

は2019年で終了となりましたが、いずれ何

らかのかたちで観たいものですね。フェデラーの

遺伝子を四通りも期待出来るなど、ファンとして

は夢のようですが、まあ、こればかりは本人達の

意思がありますから、今はただ、健やかに育って

欲しい、それだけですね。

さて、最後になりますが、ロジャー・フェデラー

の引退について私はこう考えます。

〝天才とは努力する凡才のことである〟

これはアインシュタインの言葉ですが、まさに

フェデラーにあてはまる言葉だと思うのです。

数多のメディアでフェデラーについてのコメント

を他プレイヤーや仲間達がするとき、皆口を揃え

てこう言います。「あいつは最高にいい奴だ」と。

天才テニスプレイヤー。孤高の戦士。レジェンド

など。様々な称号やイメージが彼にはあると思い

ます。しかし、根幹は〝最高にいい奴〟なのです。

フェデラーの家系はスイスでも中流階級で、けっ

して裕福な家庭に育ってきたわけではありません。

テニスは父親のロベルトが趣味で始めたことで

興味を待ちその才能が開花しましたが、御両親

は一度もプロになれとは言わなかったそうです。

若い頃は激情に任せてラケットを何本も叩き折り

ました。2000年にはシドニーオリンピック

で同じスイス代表であったミルカに恋をして一途

に愛し、子宝にも恵まれました。そう。振り返っ

てみても至って平凡なんです。もちろん巨額の

賞金を稼いできたわけだし、常人が体験できない

世界を見てきたのでしょうけれど、仲間達には

最高にいい奴と評され、若さに任せて怒りを露わ

にし、恋をしたら一直線で一途。そう。普通なん

です。素朴で愚直。しかしただ一つ非凡であっ

たのが、弛まぬ努力とそれを無駄にしない強い

意志。〝天才とは努力する凡才のことである〟

平凡な少年は片田舎の街から世界の頂へと上り

詰め。多くの人々に夢と希望を与えました。私

もその中の一人。この20年。どれほど心を

豊かにしてもらえたか言い知れません。

「完璧な旅だった。もう一度やり直したい」

引退試合で彼はこう言い残しました。是非この

完璧な旅を、後塵の選手達に継承してもらい、

テニス界を大いに盛り上げて頂きたい。まだまだ

語り尽くせませんが、今回はこの辺で。

では、また、、

先述した謎の黒いラケットの正体はこちら。

ウィルソン・プロスタッフRF97。

この前のモデルまでが派手な配色だったので

当時は試作品と勘違いした方も多かったよう

です。一旦黒白になりましたが再度黒黒へと

戻されました。理由は〝気分〟さすが王者 笑